オムロンは2022年度内をめどに、草津工場(滋賀県草津市)内を走る自動搬送ロボット(モバイルロボット)の制御にローカル5G(第5世代移動通信システム)通信を適用する(図1)。従来使用していた無線LAN(Wi-Fi)は通信が不安定で、ロボット同士が衝突する場合があった。ローカル5Gに切り替えることでロボットの位置を正確に制御でき、衝突を防げるだけでなく走行効率も良くなる見通しだ。
まずは2022年夏をめどに同工場にSub6帯のローカル5Gを整備する。工場内で部品や製品を搬送する、同社製のモバイルロボットの制御に活用する。
モバイルロボットは内蔵するレーザースキャナーで障害物を検知する他、周囲の環境を計測している。レーザースキャナーで得た情報をSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)技術で処理すると、ロボットは移動可能な範囲の地図を作製するとともに自身の位置情報を取得できる。同じフロアで複数台を運用する場合、サーバーにあるソフトウエアがこの位置情報を基にロボットの位置関係や走行をまとめて制御している。
従来、サーバーとの通信はWi-Fi経由で行っていた。ところがWi-Fiによる通信はロボットが移動する過程で途切れることがある。すると、ロボットの位置を把握できなくなるため、搬送ルート上の交差点や集荷場などでロボット同士がお見合いして一時停止したり、ぶつかったりしていた。衝突により搬送中の物が破損するケースもあったという。ローカル5Gに切り替えると通信が安定して、常に正確な位置情報をサーバーに送れるようになり、衝突などを防げる。
加えて、走行の効率も改善できると見込む。Wi-Fiの場合、データ通信に遅延があるため、タイムリーな制御が難しく、モバイルロボットは少し蛇行しながら進む場合があった。低遅延でデータ通信ができるローカル5Gを使うと、動き続けるモバイルロボットの位置をほぼリアルタイムで取得し、制御できるようになる。その結果、蛇行せずに無駄なく走行できるようになると見込む。オムロンのインダストリアルオートメーションビジネスカンパニーで技術開発本部長を務める太田康裕氏は「無駄がなくなればロボットのエネルギー消費も減るので、カーボンニュートラルにつながる」と期待を込める。