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 水素をはじめとした環境・エネルギー対策に関する技術の展示が目立った「HANNOVER MESSE 2022」。一方で、「デジタルツイン」や「5G」「ロボット」といったインダストリー4.0の軸となるデジタル技術の展示も充実していた。間近で現物を見られるリアル展示で、インダストリー4.0が、「当たり前」になったと再認識した来場者も多かったはずだ。

 米・マイクロソフト   日本・川崎重工業 
仮想空間で協業できる産業メタバース

 デジタルツインを活用しながら製品開発から試験までのあらゆる工程をメタバース(仮想空間)上で進め、複数の拠点にいる関係者の共同作業を実現する「インダストリアルメタバース」。米Microsoft(マイクロソフト)が川崎重工業と連携し、開発中のソリューションを参考出展した(図12)。

図1 デモンストレーション用のロボット
図1 デモンストレーション用のロボット
ディスプレーにはデジタルツインを表示している。写真左手に立っているのはKawasaki Robotics EMEA Presidentの坂東賢二氏。(写真:日経ものづくり)
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図2 仮想空間上でデジタルツインを確認するアバターのイメージ
図2 仮想空間上でデジタルツインを確認するアバターのイメージ
(出所:マイクロソフト)
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 開発中のインダストリアルメタバースでは、デジタルツインをマイクロソフトのクラウドサービス「Microsoft Azure」上に構築する。異なる場所にいる人が、通信会議システムを用いて仮想空間を共有できる「Mesh for Microsoft Teams」のサービスを併用。Mesh for Microsoft Teamsのユーザーが、Azure上に構築したデジタルツインを使って共同作業ができるようにする。

 各ユーザーは仮想空間にアバター(仮想空間上の分身)を使って参加し、アバターの視点で仮想空間上のデジタルツインを観察・操作する。このデジタルツインを用いて、遠隔地にいる複数の関係者が通信ネットワークを介して協業するのがインダストリアルメタバースの狙いだ。

 通信会議システムだけでは困難だった、「現物」を見たり触ったりしながらの設計検討を実現できるわけだ。デジタルツインを活用するので、精度の高い検討が可能になるとしている。検討結果を円滑に現物に反映できるメリットもある。

 複数拠点から関係者が1カ所に集まるのに要する時間も節約でき、生産性を高められる。トラブル発生時にもすぐに対処できる。顧客が参加していれば、その場で顧客の判断を反映することも可能だ*1

*1 工場や生産ラインの設計に活用すれば、度重なる変更があってもその履歴を集積できる。履歴情報を仮想空間上で再現し、変更すべき理由を遠隔地にいる関係者全員が理解しながら設計変更できる。
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