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「俺、辞めるわ。これはお前がやってくれ」
「え?」

 仲田の頭の中は真っ白になった。一体どういうことだ。尊敬する先輩が定年前に日産を辞めて出て行くというのだ。おまけに、先輩が今仕掛けている仕事を引き継げと自分に言ってきた。むちゃぶりにもほどがある。でも、入社した頃から散々お世話になり、背中を追い掛けてきた先輩でもある。返事は1つに決まっている。

「分かりました」

 そう返す以外、ないじゃないか。

大変なのって、俺?

 仲田は半年ほど前のことを思い出していた。役員が突然、「シリーズハイブリッドシステムを開発せよ」と開発部門に言ってきた。この指示を受けて、先輩が開発リーダーを担当することになっていたはず。その話を聞いた仲田は、「ふーん、やるんだ。先輩も大変だな」と、まるで他人事のように捉えていた。ところが、その大役が突然自分に回ってきたのだ。

「あれ?大変なのって…。もしかして、俺のことじゃないか?」。

 こうして仲田は、後に「e-POWER」と名付けられることになるシリーズハイブリッドシステムのチーフ・パワートレーン・エンジニア(Chief Powertrain Engineer:CPE)に就任。開発リーダーとして誰よりも大きな重責を担うこととなった。

日産自動車のシリーズハイブリッドシステム「e-POWER」
日産自動車のシリーズハイブリッドシステム「e-POWER」
(写真:日経クロステック)
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