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アクセルペダルだけでクルマの加減速を制御する「ワンペダル」。日産自動車の電動化技術「e-POWER」を体験した多くの人が、その独特な乗り味に新鮮さを覚えたに違いない。回生ブレーキが強すぎると考えるべきか、むしろクルマを操る面白さと捉えるべきか。開発の舞台裏には技術者たちによる逆転の発想があった。(本文は敬称略)

「仲田さん、温かいコーヒーをどうぞ」
「ありがとう。今朝は一段と冷えるな」

「はい。この寒さでも走れるなんて、クルマってすごいです」

 ある冬の朝のこと。日産自動車「e-POWER」開発チームの姿は、同社の北海道陸別試験場(陸別町)にあった。「日本一寒い町」を掲げる陸別町。この日の気温はマイナス20度近い。いてつくような寒さの中、吐息が含む水分はきらめき、外気に触れる肌にはまるで針で刺されたような痛みが走る。

「うまく良いデータを得たいものだが」

 チーフ・パワートレーン・エンジニア(Chief Powertrain Engineer:CPE)の仲田直樹は、こうつぶやきながらテストコースの端に置かれた1台のコンテナを見つめた。その正体は冷凍庫。車両がそのまま入るほどの大きさで、極寒ともいえる外気温よりもさらに低温、マイナス30度近くまで車両を冷やせる。過酷な状況下で車両が正常に動くかどうかを確かめるための準備室というわけだ。コンテナから出されて冷え切った車両は、摩擦係数が小さい低μ(ミュー)路や圧雪路といった、厳しい路面状況を模したコースで性能評価に臨む。

 仲田らがこの同試験場を訪れたのは、開発を進めていたe-POWERの原形ともいえる試作シリーズハイブリッド車の性能を確かめるために他ならない。他の試験場でもさまざまな試験やシミュレーションをこなしてきたが、それらを通してe-POWERを小型車で実現する難しさに直面していた。

仲田直樹
仲田直樹
CPEとして第1世代のe-POWERの開発リーダーを務めた。(写真:日経クロステック)
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