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 人工知能(AI)を使うには大量の学習データが必要─。そんな常識を覆そうとしているのは、安川電機の子会社であるエイアイキューブ(東京・中央)だ。同社のAIソリューション「Alliom(アリオム)」は、「学習データがなければ自ら作ってしまう」という驚くべきアプローチでAIの普及に挑んでいる。

 一般に、人が何となく判断していることを人工知能(AI)で置き換えるには、人の判断結果をAIに学習させる必要がある。例えば、図1に示したポテトサラダの写真を見比べて、どちらがうまく盛り付けられているかと聞かれたら、多くの人は(a)を選ぶだろう。しかし、それを自動化しようとすると、合否の条件を明確にしなければならないので、とたんにハードルが上がる。そこで、条件を明確にしなくても自ら学ぶAIを使おうとなるのだが、そのためには学習データとなる「うまい盛り付け」や「へたな盛り付け」の画像が大量に必要になる。

図1 盛り付け方の異なるポテトサラダ
図1 盛り付け方の異なるポテトサラダ
(写真:エイアイキューブ)
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 ところが、学習データがなかなか手に入らないというケースが多い。その代表例は、製造業における不良品だ。製造業の現場からは「歩留まり(良品率)が高いから、学習データとなる不良品のデータ(画像など)がそもそもない」などという声がよく聞かれる。ポテトサラダの例でいえば、日常業務で「へたな盛り付け」はそんなにないだろうから、「へたな盛り付け」の画像を大量に確保するのは難しいだろう。つまり、ほとんどの企業では品質が高い故に品質検査にAIを使うのが大変という皮肉な状況なのである。

 エイアイキューブは、こうした状況を打破しようとしている。現在、同社が主に支援しているのは、ばら積みされた不定形物のピッキングや、形や大きさがまちまちな傷を見つける外観検査といった、判断基準が複雑な作業の自動化だ(図2)。これらの工程は、「AIを活用したくても、AIモデルの構築に必要なデータが十分に得られず(または取得に時間がかかり)、自動化が進んでいない」(同社代表取締役社長の久保田由美恵氏)。Alliomは、学習データ用にリアルなニセモノ画像(疑似画像)を自動で大量生成し、AIに学習させている。

図2 Alliomで自動化したピッキング作業のデモンストレーション
図2 Alliomで自動化したピッキング作業のデモンストレーション
ばら積みされたケーブルの束をピッキングする様子。Alliomを使ってAIの学習に必要な大量の画像を自動生成し、把持可能な位置を検出するAIを構築した。(出所:エイアイキューブの動画をキャプチャー)
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