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 米国最大の製造技術の展示会「International Manufacturing Technology Show 2022」(以下、IMTS 2022)が、2022年9月12~17日、シカゴのマコーミック・プレイスで開催された。隔年開催の同展示会は、2020年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で中止だったため、4年ぶりの開催となった。

 高い加工精度や優れた機能で世界でも強い競争力を誇る日本の工作機械メーカーが、今回も数多く出展。例年通り特等席とも言える「南館」最前列にブースを構えたヤマザキマザック(愛知県大口町)は、「新型コロナの影響もあって、前回(IMTS 2018)と比較すると来場者数の減少を予想しているが、その分一人ひとりの顧客と中身の濃い商談をしたい」と、久々の大舞台に臨んだ。同社は、例年この場で市場の声をつかみ、北米向け製品の開発に生かしている。

 一方、新型コロナを経て大きな変化もあった。例えば、過去10年以上、やはり南館最前列にブースを構えてきた業界最大手のDMG森精機が今回は出展を見送った。例年より規模をかなり縮小した国内メーカーもあった(「2極化する巨大展示会の価値観、コロナで変わった最前列の“顔”」の別掲記事参照)。

 コロナ禍を契機に1つの転換点を迎えたともいえるIMTS。以下では、来場者の目を引いていた国内主要メーカーの注目展示を紹介する。

ヤマザキマザック
「軽薄短小」の米トレンドに応える

 ヤマザキマザックは、同社としては初となるスイス式NC旋盤「SYNCREX(シンクレックス)」シリーズを披露した(図1)。

図1 「SYNCREX 25/9X」
図1 「SYNCREX 25/9X」
型番の「25」は加工できるワーク(バー材)の最大直径(mm)を、「9」は軸数をそれぞれ表す。前者は20、25、32、38mm、後者は7、8、9、9Xのラインアップがあり、それらを組み合わせた16種類を用意している。9Xの「X」は同時5軸加工の可否(Xが付くと可能)を表す。主軸の回転速度は最大1万rpm。(写真:日経ものづくり)
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 スイス式旋盤は、ワークを回転させながらその回転軸(z軸)方向に出し入れして加工する旋盤。主軸が移動するので「主軸移動型旋盤」とも呼ぶ。通常の旋盤はワークをチャックに固定して回転させ、工具を移動させて加工する。対してスイス式旋盤は、ガイドブッシュでワークを保持した上で、z軸の動きをワーク側が担う。

 この加工によるメリットは、工具をz軸方向に動かす必要がなく、常にガイドブッシュの近い位置で加工できる点だ。つまり、ワークがたわみにくくなるので加工精度が高まり、ビビりなどの発生も抑えられる。そのためスイス式旋盤は、高い精度が求められる機械式時計の小型部品や細長い部品の加工に広く使われている(図2)。

図2 加工のデモンストレーションの様子
図2 加工のデモンストレーションの様子
工具が左右からくし状に並んでいる。加工内容に応じて異なる工具を使う。(写真:日経ものづくり)
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 スイス式旋盤で後発のヤマザキマザックは、装置のベッドで差異化を図った。工作機械のベッドは金属製(鋳物)が一般的だが、同社は他の機種で実績のあるミネラルキャスティングを採用した。ミネラルキャスティングとは砂利と樹脂を使った複合材料。金属製のベッドと比べて、装置の振動をより早く減衰できる(振動減衰性に優れる)という。

 振動の抑制は工具の長寿命化につながる。「SYNCREXの開発に当たっては、鋳物とミネラルキャスティングのベッドを両方試作して性能を比較した。その結果、ミネラルキャスティングのほうが、工具寿命が最大2倍に延びた」(同社上席執行役員商品開発本部副本部長先行開発センタセンタ長FAソリューション事業部事業部長の堀部和也氏)と言う。

スイス式旋盤に参入した理由

 「数年前までの米国の製造業は、オイルガス、建設機械、航空機関連などいわゆる“重厚長大産業”が中心だった。近年では、宇宙や医療関連、半導体、IT機器、一般消費財など“軽薄短小”向け生産設備への投資がトレンドになっている。スイス式旋盤の需要も増加傾向だ」(ヤマザキマザック)。同社は、近年の米国産業の動向をこう捉えている。

 こうした業界の変化を背景に、「医療部品などの小型で高精度な量産部品をターゲットとして、スイス式旋盤への参入を決めた」(同社)という。SYNCREXシリーズは、2022年6月から米国内限定で販売している。価格は16万3300米ドルから。日本を含む他地域への投入は未定となっている。

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