開業150年の節目に、新型コロナウイルス感染症の直撃を受けた鉄道。一方で脱炭素へ向けて社会が動く中、二酸化炭素(CO2)排出量の少ない大量輸送機関として、むしろ利用者を増やすべき使命がある。コスト削減と利用者増加の二律背反を実現するよりどころとなるのがデジタルトランスフォーメーション(DX)だ。鉄道のあらゆる分野でDXの試みが一斉に進み始めた。

鉄道DX
目次
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ロボットからオンライン決済まで、DXが引き出す鉄道の底力
Part1 総論
国内最大の乗降客数があるJR東日本新宿駅。新型コロナウイルス感染症拡大前の2018年度には78万9366人だった1日平均の乗降客数が、感染拡大後の2020年度には約4割減の47万7073人になった。2021年度は52万2178人とやや戻ってきたものの、鉄道は大幅な利用者減に見舞われている。
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危ない・しんどい作業から人を解放、あの手この手でコスト削減
Part2 保守・管理の省力化(ロボット・無線・ドローン)
レールの交換や軌道の修正などを行う保線作業でも、自動化技術・デジタル技術の活用が進んでいる。熟練技能者の減少や人手不足、働き方改革などに伴って求められる省人化や省力化に、ロボットや無線監視システムなどが一役買っている。デジタルカメラの画像を利用した検出技術によって、人間の作業員では困難な高精度の測…
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車上IoTで消費電力を削減、コロナ禍後の車両数減の決断にも
Part3 車両の情報収集(センサー・IoT)
車両や関連設備に取り付けたセンサーから収集したデータの活用が進んでいる。走行中の車両のデータを基に運行の効率化を図ったり、遠隔地から車両状況を監視したりするシステムは、既に運用が始まっている。
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ダイヤの乱れもAIが回復、運行最適化で乗客数倍増へ
Part4 効率的な運行(画像処理・人工知能・デジタルツイン)
鉄道の運行計画はダイヤグラムなどの形であらかじめ決めてあるが、実際にはトラブルに対応して計画を臨機応変に変更している。さらに輸送需要は毎日同じではなく、本来は需要に合わせて最適な運行に変えるのが望ましい。そうして鉄道の利用が増えれば、相対的に人や物の移動によって生じる二酸化炭素排出量も減る。
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QRコードがきっぷ代わりに、リアルタイムの車内映像で防犯
Part5 旅客サービス向上(チケットレス・QRコード・通信)
デジタル技術の応用による顧客サービスの改善はDXの大きな目標の1つ。きっぷの発券システムのデジタル化、きっぷ自体のデジタル化に続いて、これまでのきっぷの概念を大きく拡張する試みが進んでいる。さらに、防犯や安全、運行、観光などの情報を的確に旅客へ提供するサービスが大容量通信によって可能になってきた。