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 国内最大の乗降客数があるJR東日本新宿駅。新型コロナウイルス感染症拡大前の2018年度には78万9366人だった1日平均の乗降客数が、感染拡大後の2020年度には約4割減の47万7073人になった。2021年度は52万2178人とやや戻ってきたものの、鉄道は大幅な利用者減に見舞われている

* 乗降客数はJR東日本の発表資料による。

 それでも、国内開業150周年を迎えた鉄道は、公共機関として利便性の高い運行の維持を求められ、さらに輸送量当たりの二酸化炭素(CO2)排出量の少ない交通手段として利用者を増やす使命がある。サービスの質を低下させずにいかにコストを削減するか。その大きなよりどころとなるのがデジタル技術の利用による業務の変容、すなわちデジタルトランスフォーメーション(DX)だ()。

図 鉄道をめぐるさまざまな課題にDXで対応
図 鉄道をめぐるさまざまな課題にDXで対応
少子高齢化などの中長期的な課題、新型コロナ禍などに関連する短期的な課題のいずれにも、DXが有力な対応策になっている。(出所:日経ものづくり)
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利便性とコスト削減を両立

 新型コロナの前から「少子化や人口減少が進み、地方では廃線が進行していて、もともと順風ではなかった」(鉄道総合技術研究所会長の向殿政男氏=明治大学名誉教授)という課題があった(「挑戦者」)。一方で、脱炭素への社会的な動きの中で鉄道に追い風も吹き始めていた。新型コロナ禍で一時中断したものの、海外からの観光客の増加もチャンスといえる。

 そこでDXによるコスト削減や、サービスの質の向上が大きな意味を持つ。設備や線路の状態の確認にロボットやドローンを使う、長期的な遠隔監視に省電力無線通信を使うなど、作業者の負荷を減らす試みが急ピッチで進んでいる(Part2「保守・管理の省力化」)。日本国内で深刻化しつつある人手不足に対しても有効な対策になる。

 IoT(Internet of Things)関連の技術によって容易になったデータ収集は、鉄道での運行情報の把握にも役立つ。従来のように計測専用の車両だけでなく、営業運転中の車両にセンサーを搭載し、データを取得できるようになった。そのデータを分析して、車両の数を適正化するなどの効果が得られ始めている(Part3「車両の情報収集」)。