BASF
「オールPU」で大幅な軽量化
ドイツBASFが展示したのは、EV向けの電池パックのプロトタイプだ(図1)。中型から大型のSUV(多目的スポーツ車)を想定し、自動車メーカーと共同で開発を進めている。
狙いは軽量化である。現行の電池パックにはアルミニウム合金や鋼が使われている。これを樹脂に置き換えて軽くし、車両質量が大きいというEVの課題に対して1つのソリューションを提供する。
全てPUにすれば30~35%の軽量化
上面を覆う濃いグレー色の部分がバッテリーアッパーカバー(図2)。ガラス繊維を50~60質量%程度使った熱硬化性ポリウレタン(PU)でできている。成形には、軽量な複合材料の加工に適したスプレートランスファー成形(STM)を採用した。ガラス繊維を織り込んだ生地(ガラスマット)にPUを噴射して含浸させた後、熱を加えながらプレスして成形する。大型化に向かう電池パックのニーズを捉え、現在は1辺が1.8~2mほどの大きさまで対応できるという。
ガラス繊維の含有に加えて、熱硬化性PUを使用しているため、熱可塑性樹脂でできた電池パックよりも熱に強い。さらに耐火性能を高めるために添加剤を加えたほか、表面にPU系のスプレーを噴霧し、耐火コーティングを施した。これにより、1000℃の高温環境に6分間、燃えずに耐えるという自動車メーカーが求める基準をクリアしている。
上面のカバーだけではなく、同社は今後の展開として電池パック全体の樹脂化も狙っている。展示したプロトタイプでは、側面の構造体に中空のアルミ合金を使っているが、これをPUに置き換えたものを開発中だ。具体的には、PUを含浸させたガラスマットを金型を使って引き抜き成形し、中空状の柱に加工する。こうして電池パックを「オールPU」に置き換えると、オールアルミ製と比べて30~35%の軽量化効果が見込めるとBASFは試算している。
放熱にもPU系材料を生かす
PUが備える熱伝導性の良さを生かし、電池セルの放熱にもPU系材料をBASFは採用する考えだ。図3で円筒型電池の隙間を埋めている水色の部分はPU製ギャップフィラーである。ラミネート型電池の場合はギャップフィラーを下に敷いて放熱性を高めつつ、形状を造り込んで位置決めにも使用する。灰色に見える接着剤にもPU系を使い、電池パック内で発生した熱を効率良く逃がす。
変色に強いPAをコネクターに採用
電池の端部にあり、オレンジ色に見える高圧コネクターには、変色しにくい樹脂を採用した。ガラス繊維を30質量%含有させて強化したポリアミド(PA)66で成形している。130℃の熱が加わる環境下に1000時間置いても、ほぼ色が変わらない。従来のPA66では時間の経過により色が落ちて白っぽくなっていた。
明瞭なレーザー印字も可能という特徴も備える。これにより、高圧を注意喚起するための文字やマークを保守作業者などにはっきりと伝えられる。
「オールPU」で大幅な軽量化、これがBASFが狙うEV用電池パック
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