原子力発電への関心が再び高まり始めている。背景にあるのは、エネルギー安全保障への関心と、カーボンニュートラル達成に向けた「脱炭素電源」としての期待だ。東日本大震災を契機に叫ばれた脱原発は、転換期を迎えている。かつての「原子力ルネサンス」は再来するのか。話題の小型原子炉や革新軽水炉など、各メーカーの新技術に迫る。

原子力ルネサンス再来
目次
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エネルギー安保や脱炭素で評価一転、新型小型炉や革新軽水炉に脚光
Part1 総論
原子力発電を再評価する風潮がにわかに高まってきた。ロシアによるウクライナ侵攻でエネルギー調達リスクが高まっているのに加え、2050年にカーボンニュートラルを達成するための脱炭素電源として再認識され始めているからだ。
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「煙突」構造で冷却にポンプ要らず、成熟技術で20年代末にも稼働か
Part2 小型モジュール炉(沸騰水型軽水炉 米GE日立・日立GE)
米GE Hitachi Nuclear Energyと日立GEニュークリア・エナジー(茨城県日立市)が共同開発する「BWRX-300」は、実用化が近い小型モジュール炉(SMR)の1つだ。2020年代末に、カナダのオンタリオ州営電力会社(Ontario Power Generation)が運転開始を…
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最大12基で原子力発電所を構成、原子炉自体を巨大プールに浸す
Part2 小型モジュール炉(加圧水型軽水炉 米NuScale Power)
複数の小型モジュール炉(SMR)を組み合わせた原子力発電プラントの開発を進めている企業がある。米国の原子力新興企業のNuScale Power(ニュースケール・パワー)だ。同社製の原子力発電プラント「VOYGR」は、2020年代末にも米エネルギー省(DOE)のアイダホ国立研究所に建設する計画がある…
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700℃以上の高温を利用可能、新しい減速材で構造を単純化
Part2 小型モジュール炉(ヒートパイプ冷却炉 東芝エネルギーシステムズ)
「あらゆる場所で利用可能な高効率原子力電池」─。東芝エネルギーシステムズ(東芝ESS、川崎市)が開発を進めている小型原子炉「MoveluX(ムーブルクス)」について、同社磯子エンジニアリングセンター原子力先端システム設計部エキスパートの浅野和仁氏はこう語る。
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炉心サイズは直径1×長さ2m、25年間燃料交換の必要なし
Part2 小型モジュール炉(全固体原子炉 三菱重工業)
三菱重工業が開発を進めているのは、炉心サイズが直径1×長さ2mとトラックで運べる超小型原子炉(マイクロ炉)だ。可搬性に優れることから、離島やへき地、災害時の電源として期待できる。
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日本初ファブレス原子炉メーカー、小型炉8基をクラスター化
Part2 小型モジュール炉(高温ガス炉 Blossom Energy)
原子力スタートアップ企業のBlossom Energy(ブロッサムエナジー、東京・文京)が高温ガス炉(HTGR)の商用化に挑もうとしている。開発に取り組むのは、8基の原子炉をクラスター化した発電システムだ。2022年4月に事業を始めた同社は自社の生産拠点を持たない、いわば原子力開発の「ファブレスメ…
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建て替えや新増設の有力候補、強化された静的安全システム
Part3 革新軽水炉
原子力発電所の建て替えや新増設の有力候補とされるのが「革新軽水炉」だ。大型軽水炉を改良して安全性を高めている。運転開始の目標時期は2030年代中ごろ。既存技術の延長線上にあるため成熟度が高く、発電単価も安価になると期待されている。