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 原子力発電を再評価する風潮がにわかに高まってきた。ロシアによるウクライナ侵攻でエネルギー調達リスクが高まっているのに加え、2050年にカーボンニュートラルを達成するための脱炭素電源として再認識され始めているからだ。国内では2011年に発生した福島第1原子力発電所の事故をきっかけに原発への期待はいったんしぼんだが、風向きが変わり始めている。

 近年、国内外のメーカーが新しいタイプの原子炉の検討・開発を進めている他、重厚長大メーカーでないと難しいと考えられていた原発開発に挑むスタートアップ企業も現れるなど、原子力発電を取り巻く動きは活発化している。足元では2022年12月、政府のGX(グリーントランスフォーメーション)実行会議が、廃止の決まった原子力発電所の建て替えや、条件付きで運転期間を延長する方針を示した。

 この状況が彷彿(ほうふつ)とさせるのは、かつての「原子力ルネサンス」だ。2000年代に米欧を中心に巻き起こった、原子力発電を再評価するムーブメントである。1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故などを受け、1990年代の原子力開発は停滞気味だったが、2000年代に入ると、エネルギー需要の拡大や環境問題などを背景に建設計画が急増した。現在の世界的な原発回帰の動きは、そんな原子力ルネサンスの再来を予感させる(図1)。

図1 原子力ルネサンスは再来するか
図1 原子力ルネサンスは再来するか
日本原子力産業協会『2020年の主な世界の原子力発電開発動向』から抜粋。(出所:日本原子力産業協会の資料を基に日経ものづくりが加工、写真は東京電力ホールディングス)
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国内では運転延長と建て替えか

 国内における原子力発電の動向に目を向けてみよう。前述のように政府は原発の立て替えや稼働延長にかじを切った。この方針転換が唐突だったかというとそうでもない。

 そもそも、政府は2021年10月に示した第6次エネルギー基本計画で、2030年度の電源構成に占める原子力の割合を20~22%にするとの目標を掲げていた。これは大型軽水炉*1で言うと27基分に相当する*2。業界団体の日本原子力産業協会で企画部長を務める古塚伸一氏は「カーボンニュートラル達成に向けて原子力が数字で語られるようになったのは大きな転機だった」と当時を振り返る。

*1 軽水炉(LWR)
原子力発電所で主流の原子炉で、減速材と冷却材を兼ねて軽水(普通の水)を使う。
*2 2023年1月までに国内では10基の原発が再稼働している。

 国内の原発の運転期間は、原則40年、最大60年と定められている。今回の方針転換では、この制限を維持した上で、一定の停止期間に限り、追加的な延長を認める。

 GX実行会議で共有された資料によると、原発の運転期間を最大60年とした場合、国内の運転可能な原発は、現存36基(建設中を含む)から2050年には23基、2060年には8基まで減少する(図2)。一方、国内の総電力需要については、2030年の約9300億kWhから、2050年には約1.4兆kWhまで増えるとの予測が示されている。原子力発電の割合を20%と仮定すると、40基が必要となる。これが稼働期間延長や建て替えが必要とされる理由の1つだ。

図2 国内における原子力発電の稼働想定
図2 国内における原子力発電の稼働想定
運転期間を最大60年とした場合の推移。政府の第2回GX実行会議(2022年8月24日)で共有された。(出所:GX実行会議の資料を基に日経ものづくりが加工)
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 それでは、建て替えや新増設を想定すると、どのような原子炉が実際の選択肢としてあるのだろうか。