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 複数の小型モジュール炉(SMR)を組み合わせた原子力発電プラントの開発を進めている企業がある。米国の原子力新興企業のNuScale Power(ニュースケール・パワー)だ(図1)。同社製の原子力発電プラント「VOYGR」は、2020年代末にも米エネルギー省(DOE)のアイダホ国立研究所に建設する計画がある他、カナダやウクライナ、ルーマニアなどが建設を検討している。

図1 原子力発電プラント「VOYGR」の断面
図1 原子力発電プラント「VOYGR」の断面
原子炉1基当たりの熱出力は250MW、電気出力は77MW 。最大12基を組み合わせて原子力発電プラントを構成する。安全性を高めるため、原子炉自体をプールに浸している。(出所:米NuScale Powerの資料を基に日経ものづくりが加工)
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 NuScale Powerには日揮ホールディングスやIHIといった日本企業も出資。この2社が建設プロジェクトに参画するという意味でも、NuScale Powerが手掛けるSMRに対する注目度は高い。

 日揮は、米国の建設会社Fluor(フルア)と協業しながら建設プロジェクトに技術者を派遣し、SMRに関わるEPC(設計・調達・建設)事業への進出を目指している。IHIは、これまで国内外に原子力機器を納入した実績を生かし、格納容器を含むSMRの部品製造に向けて、溶接技術の確立などに取り組む。

 国際原子力機関(IAEA)によると、世界ではさまざまな方式のSMRが提案されており、2021年春時点で約70以上もの開発が進められている。その中でも、減速材と冷却材を兼ねて軽水(普通の水)を用いる軽水炉型のSMRは、既存の原子力技術の延長線上にあるため、商用化が最も近いとされる。