全3034文字
PR

　「あらゆる場所で利用可能な高効率原子力電池」─。東芝エネルギーシステムズ（東芝ESS、川崎市）が開発を進めている小型原子炉「MoveluX（ムーブルクス）」について、同社磯子エンジニアリングセンター原子力先端システム設計部エキスパートの浅野和仁氏はこう語る（図1）。

図1　MoveluX（ムーブルクス）
図1　MoveluX（ムーブルクス）
熱出力は10MW、電気出力は3～4MW。原子炉容器（RV）を地下に、発電設備を地上に配置する。（出所：東芝エネルギーシステムズの資料を基に日経ものづくりが加工）
[画像のクリックで拡大表示]

　MoveluXは小型かつ高温を取り出せるのが特徴で、建設地の選択肢が広がる他、燃料交換なしで20年間稼働する。へき地における電源や水素製造の熱源としての利用を想定する。その構造は原子力発電所で一般的な軽水炉と比べて大きく異なる。

　MoveluXでは、高さ6×直径2.5mの原子炉容器（RV：Reactor Vessel）をコンクリート製の地下室に配置し、発電設備を地上に置く。熱出力は10MW、電気出力は3～4MWを想定する。電気出力1GW程度の大型軽水炉の数百分の1の規模だ。

　同社がこの原子炉の開発に着手したのは2016年ごろ。現在はシミュレーションによる概念設計が固まった段階で、今後、本格的な実証実験に着手する。詳しい実用化の時期や建設費用は公表していない。新概念の原子炉であるため、実用化という面では米GE Hitachi Nuclear Energyや米NuScale Powerなどが開発を進めている軽水炉型の小型モジュール炉（SMR）が一歩先んじる。