約10年前、「誰でもメーカーになれる」ツールとして話題となった3Dプリンター(付加製造装置)。当時は個人のホビーや試作の範囲を超えた活用例が少なく、産業用途ではまだ使いにくいというイメージが広がってブームは終息した。ところが、着実に技術は進歩し、欧米を中心に最終製品を造る手段として利用が広がっている。欧米と比べて3Dプリンターの普及が遅れる日本でも少しずつ活用例が増えてきた。先進的な活用例と共に近年の開発動向を紹介する。

ブームから10年、3Dプリンター活用の波
目次
-
ユーザーの用途、この10年で明確に 世界で本格化する最終製品向け活用
Part1 総論 3Dプリンター 活用の波
「10年前と異なり、近年はユーザーの用途が明確化している」─。3Dプリンター〔付加製造(AM)装置〕の業界関係者は異口同音にこう語る。3Dプリンターが世の中に広く知れ渡ったのは約10年前。当時は個人のホビー用途や試作向けが主な用途だった。
-
バルブやフィルター、治具も造形 従来工法より速い・安い・高機能
Part2 活用事例 Schneider Electric、Ford Motorなど(素材:金属・樹脂)
米HPは世界最大級の3Dプリンティングの展示会「Formnext 2022」に出展し、金属や樹脂の部品を造形できる同社の3Dプリンターを披露した。ブースの大部分はユーザーなどによる造形品の展示に割いた。金属3Dプリンターは、先行して利用した企業が最終製品を含む生産に役立てている。
-
2人乗り電動車を丸ごとプリント、構想から完成までわずか3カ月
Part2 活用事例 Stratasys、nFrontier(素材:樹脂)
米Stratasys(ストラタシス)は、内外装などを3Dプリンター〔付加製造(AM)装置〕で造った電動モビリティー「UILA」のプロトタイプを世界最大級の3Dプリンターの展示会「Formnext 2022」で披露した。
-
ロストワックスの原型を製作、開発加速や部品一体化が魅力に
Part2 活用事例 花岡金属(素材:樹脂)
金属材料の販売や金属部品の設計協力・加工を手掛ける技術商社の花岡金属(東京・千代田)は、樹脂系3Dプリンターで鋳造法の一種である「ロストワックス」の原型を造る提案を始めた。
-
航空や半導体で事業を拡大、じり貧回避の切り札に
Part2 活用事例 東金属産業(素材:金属)
金属加工メーカーの東金属産業(静岡県沼津市)が金属3Dプリンターを活用し、ものづくりの付加価値を高めようとしている。同社は2014年に初めて3Dプリンターを導入し、2023年時点で5台が稼働している。
-
EV市場切り開く「4番バッター」に、5年で売上高1割への成長目指す
Part2 活用事例 大丸鐵興(素材:金属)
大型の金属加工を手掛ける大丸鐵興(茨城県境町)は主力製品の売り上げ減少が見込まれる中、新たな事業を育てるべく2022年に金属3Dプリンターを導入した。
-
「最大が最高」がモットー、3mの造形可能な装置を開発中
Part3 装置の進化 SLM Solutions Group(素材:金属/造形方式:PBF方式)
ニコンが買収したドイツの金属3DプリンターメーカーSLM Solutions Group(SLM)が、最大3×1.2×1.2mの大きさの部品を製造できる大型の金属3Dプリンターを提供する方針を明かした。
-
造形速度500倍、コスト9割減 新たな造形原理で米市場へ
Part3 装置の進化 SUN METALON(素材:金属/造形方式:新原理)
「造形速度500倍、コスト90%減」─。そんな衝撃的な数値を掲げた金属3Dプリンターが現れた。手掛けたのは日本製鉄の出身者などが2021年2月に創業したスタートアップSUN METALON(サンメタロン、川崎市)。今までの3Dプリンターとは異なる「新原理」(同社)の造形手法を採用している。
-
「10年は使える」工業用グレード、工作機械にAM機能後付け構想も
Part3 装置の進化 ExtraBold(素材:樹脂/造形方式:FGF方式)
ExtraBold(エクストラボールド、東京・豊島)は、「製造業に入り込める」ことにこだわった3Dプリンター(付加製造装置)開発をしている。「製造業に入り込める」とは、日本企業が求める工業製品を造れる性能と品質、安定性を備えていることを意味する。
-
8K液晶パネルで1m級に対応、自動車分野の大型部品狙う
Part3 装置の進化 Photocentric(素材:樹脂/造形方式:光造形方式)
樹脂系3Dプリンターを手掛ける英Photocentric(フォトセントリック)は、世界最大級の3Dプリンティングの展示会「Formnext 2022」(2022年11月15~18日、ドイツ・フランクフルト)に出展し、新開発した同社最大の3Dプリンター「Liquid Crystal Titan」を展…
-
ノズル変更で造形速度5倍、チタンやアルミも扱いやすく
Part3 装置の進化 Digital Metal(素材:金属/造形方式:BJT方式)
3Dプリンターを開発・製造する米Markforged(マークフォージド)傘下のスウェーデンDigital Metal(デジタルメタル)は、造形速度が同社が2018年に販売した従来機「DM P2500」と比べて造形速度が5倍の金属3Dプリンター「DMP/PRO」を開発した。
-
サポートレスで造形時間半減も、品証機能応用しレーザーを制御
Part4 周辺技術の進化 EOS(周辺技術:Smart Fusion)
3Dプリンターはボタン1つでものづくりが完了するように見えるものの、実際は面倒な後処理がつきものだ。その1つが造形物を支える「サポート」の除去。
-
AI使いサポートを自動除去、オペレーションコスト9割減
Part4 周辺技術の進化 Rivelin Robotics(周辺技術:NetShape)
英スタートアップのRivelin Roboticsは、金属3Dプリンターを使ったものづくりで造形物の土台や足場となる「サポート」の除去など後処理工程を自動化する装置を開発した。人工知能(AI)などを活用した制御ソフトウエアにより、さまざまな形状の造形品のサポートをロボットアームに装着したカッターな…