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 企業における無線LANの活用は当たり前のものとなっている。今や業務システムに接続する際に無線LANをメインとする企業が多数派となりつつある。有線LANを撤去した企業もあるくらいだ。

 その背景にはテレワークの普及とオフィススペース利用の効率化がある。効率化の一例がフリーアドレスの導入である。企業が社員にテレワークを許可した上で、オフィスをフリーアドレスにすれば社員全員分の執務スペースを確保しなくて済む。

 東京に本社がある企業1万社を対象に森ビルが実施した「2021年 東京23区オフィスニーズに関する調査」によれば、2019年には19%だったフリーアドレスの導入率は2021年には32%にまで増えている。フリーアドレスではオフィス内を社員が自由に移動するので、無線LANが不可欠となる。

高速化も無線LAN普及を後押し

 無線LANが高速化し、多数の利用者による同時接続に対応できるようになったことも普及を後押ししている。2009年に策定されたIEEE 802.11n以降、2022年までに新たな規格が2種類策定されている(表1-1)。2013年に策定されたIEEE 802.11acでは最大伝送速度が6.9Gビット/秒となり、802.11nの10倍以上となった。2021年に策定されたIEEE 802.11axは最大9.6Gビット/秒とさらに高速になり、理論上有線LANと同等の速度で通信ができるようになった。

表1-1●無線LAN規格は高速化を続けてきた
無線LANの規格は進化し続けてきた。最新規格のIEEE 802.11axは実測で有線LANの1000BASE-Tと同等の性能を備える。
表1-1●無線LAN規格は高速化を続けてきた
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 無線LANの速度は変調方式の符号化効率、ストリーム数、帯域幅の3つの要素で決まる。802.11axでは変調方式として1024QAMに対応した。これは802.11acの256QAMと比べ、符号化効率が4倍になっている。最大ストリーム数と最大帯域幅は802.11acと802.11axで変わらない。ストリームとはMIMOによって送受信できる電波の経路を指す。MIMOは複数のアンテナを同時に使って通信し、無線LANアクセスポイント(AP)と端末間のストリームを増やす技術だ。最大8ストリームに対応している。また帯域幅は20MHzのチャネルを最大で8個つなげられ、160MHzまで利用できる。