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 無線LANでは、データは電波として無線LANアクセスポイント(AP)と端末の間でやりとりされる。電波の届く範囲にいる人なら、誰でもその電波を受信できてしまう。このため可用性だけではなくセキュリティーの観点からも、無線LANの電波が届く範囲を把握することは重要だ。

 そこで、部屋の壁などを通じて無線LANの電波がどこまで届くのかを調べてみた。

壁とドアの2ケースで実験

 実験は複数の企業が入居する商業ビルで実施した。

 実験では2つのケースを想定した。ケース1では、厚さ約1.5mの壁越しに届く電波の強度を測定した(図4-1)。正確には確認できなかったが、壁の表面はコンクリート、壁の内部は鉄筋コンクリートと想定している。

図4-1●1.5mの壁による電波強度の減衰を測定
図4-1●1.5mの壁による電波強度の減衰を測定
無線LANの電波到達を調べる実験「ケース1」の概要。1.5mの壁の影響を調べるため、場所(1)から場所(5)で電波強度を測定した。
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 電波強度の測定には、持ち運べる専用の機器を使用(図4-2)。APは天井に設置する企業向け製品と、据え置き型の家庭向け製品の2種類を用意した(図4-3)。

図4-2●可搬の専用機器で電波強度を測定
図4-2●可搬の専用機器で電波強度を測定
実験の模様。持ち運べる専用機器を使って、様々な場所の電波強度を測定した。
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図4-3●実験に使用した企業向けAP
図4-3●実験に使用した企業向けAP
実験の模様。実験では、天井に設置するタイプの企業向けAPを使用した。これに加えて、据え置き型の家庭向けAPも使用した。
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 今回の実験で設置したAPは四方を壁で囲まれていたわけではない。このため壁を回り込んで壁の裏側に到達する可能性はある。だが壁を避けるためには数十m以上回り込む必要があり相当減衰するので、壁の裏側で受信した電波のほとんどは、壁越しに到達した電波と考えてよいだろう。

 ケース2では、ドアや石こう壁、すりガラスなどで囲まれた部屋に設置したAPの電波が、外部にどれだけ届くかを測定した(図4-4)。電波出力などの設定は初期状態のままにした。周波数帯は、2.4GHz帯と5GHz帯の両方で測定した。

図4-4●ドアや石こう壁などによる電波強度の減衰を測定
無線LANの電波到達を調べる実験「ケース2」の概要。ドアや石こう壁、すりガラスなどの影響を調べるため、場所(1)から場所(5)で電波強度を測定した。
図4-4●ドアや石こう壁などによる電波強度の減衰を測定
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