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 ローカル5Gは携帯大手のサービスと違って、ネットワークは企業が自ら構築しなくてはならない。そのため導入コスト、エリア外で通信する場合のローミングなどの実装方法、通信速度をはじめとする性能といった点も理解しておきたい。

 最も気になるのはコストだろう。しかし、ローカル5Gに関しては日本がドイツと並んで先行しているとされているのに、具体的なコストがいまだに見えていないのが実情だ。

 ある業界関係者は、「NSA構成だと端末が1台5万~10万円と高く、初期投資がかかる。基地局も5G基地局と制御用の4G基地局の両方が必要で、まだ高い」と指摘する。別の業界関係者も「基地局1局と端末数十台で数百万円かかるという話が聞こえてくる。まだはしりの時期と考えるべきだろう」と話す。

IoTでは利用料が高額になる恐れ

 設備のコストが見えない中、確定しているコストもある。電波利用料だ。ローカル5Gでは周波数免許を取得し、年額の電波利用料を払って利用する。電波利用料は無線局の種類や出力、設置場所などに応じて決まり、ローカル5GとNSA構成で利用する自営BWA(正式には自営等BWA)の金額は電波法で規定されている(図4)。

図4●ローカル5Gと自営BWAの電波利用料
図4●ローカル5Gと自営BWAの電波利用料
28.2G~28.3GHzは最初に制度化したローカル5Gである。
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 ローカル5GをIoTで使おうと考えているなら注意が必要だ。ローカル5Gの通信モジュールを搭載したデバイス(端末側)は、性能や大きさに関係なく陸上移動局1局として数えるからである。

 陸上移動局の電波利用料は1局当たり年額370円。例えば工場の部品や装置を監視・管理するために1万個のローカル5Gモジュールを取り付けたとする。電波利用料はモジュールの分だけで年額370万円となる。

大手とのローミングもこれから

 コスト以外にも気になる点は多い。ローカル5Gをスマホで利用する場合、自社の敷地外ではどうすればよいだろうか。

 例えば自社ビルではローカル5Gにつなぎ、それ以外では携帯大手(全国MNO)のネットワークにつなぐ方法がある。ただしローカル5Gは、ローミング(相互乗り入れ)や設備共用などの連携に関して制度面で認められないケースがある(図5)。

図5●ローミングは移動方向によっては不可
図5●ローミングは移動方向によっては不可
ローカル5Gから全国MNOへのローミングは可能。一方、全国MNOを補完する目的だけでローカル5Gを利用することは認められていない。
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 ローカル5Gを補完する目的で全国MNOのネットワークを利用することは認められている。ローカル5Gから全国MNOへのローミングは可能で、「自社の外では携帯大手のサービスにつながる」という使い方であれば問題ない。

 一方、全国MNOを補完する目的だけでローカル5Gを利用することは認められていない。全国MNOからのローミング先にしか使わないローカル5Gは構築できない。ただし自社設備の監視などの用途でもローカル5Gを使うのであれば問題ない。ローカル5GをNSA構成で構築して、そのアンカーバンドとして全国MNOの4Gネットワークを使うのも可能だ。

 では、ローカル5Gと全国MNOのネットワーク同士を接続してローミング環境を構築するのは簡単なのだろうか。

 インターネットイニシアティブ(IIJ)は「ローミングではローミング元の事業者(SIM発行事業者)とローミング先の事業者で何らかの形でコアネットワークを接続する必要がある。しかし一般的に携帯大手はコアネットワークに他のネットワークを接続することに大変慎重だ。接続する側が、網改造料などコストの負担を求められる場合もある」と説明する。

 そこで同社はMVNOとして、ローカル5Gの端末を全国MNOのネットワークにつなげる「窓口」となるサービスの展開に可能性を見いだしている。

▼MNO
Mobile Network Operatorの略。一般的な携帯電話事業者(キャリア)。
▼SIM
Subscriber Identity Moduleの略。
▼MVNO
Mobile Virtual Network Operatorの略。仮想移動体通信事業者などとも呼ばれる。