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 ネットワークを構成するケーブルといえば、家庭や企業で使われているLANケーブルを思い浮かべる人が多いだろう。だが実は、一般の人が目にしないインターネットやデータセンターなど、家庭や企業以外のほとんどの場所で光ファイバーが活躍している。

 光ファイバーはデータを光信号に載せて伝える。電気信号よりも減衰しにくいため遠くまでデータが届く。また周波数帯域幅が広く、高速大容量通信が可能だ。

 この特集では光ファイバーについて取り上げる。このPart1では、光ファイバーの基本的な仕組みを解説する。

家庭や企業でも使われている

 まずは光ファイバーが使われている場所を見ていく(図1-1)。

図1-1●ネットワークのいたるところで使われている光ファイバー
図1-1●ネットワークのいたるところで使われている光ファイバー
家庭内や企業内などでの短距離通信にはLANケーブルが使われるが、それ以外のほとんどの場所では光ファイバーが使われている。
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 家庭ではパソコンを有線でつなぐときLANケーブルを使うが、インターネットのアクセス回線にFTTHサービスを利用していれば、宅内に置くONUより外部はすべて光ファイバーを使う。

 企業でもオフィススペースではパソコンをLANケーブルでつなぐが、ビルの各階をつなぐような場合は光ファイバーが使われる。

 さらにFTTHのアクセス網、通信事業者やプロバイダー(ISP)の幹線、海底ケーブルなど大規模なネットワークでは間違いなく光ファイバーが利用されている。

光ファイバーは石英ガラス

 光ファイバーは光信号でどのようにデータを送るのだろうか。光ファイバーの構造を見てみよう(図1-2)。

図1-2●光ファイバーで信号を送れる仕組み
図1-2●光ファイバーで信号を送れる仕組み
光ファイバーは、屈折率の高いコアを屈折率の低いクラッドが囲む構造をしている。全反射という現象を利用し、コア内に光信号を閉じ込めることで、遠くに伝えることができる。ただし、光ファイバーを大きく曲げると全反射の条件を満たさなくなり、光がクラッド側に漏れてしまう。
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 光ファイバーの基本的な材質は石英ガラス(SiO2)である。断面を見ると、中心部は光の通り道となる「コア」があり、その周囲には光を閉じ込める「クラッド」がある。コアとクラッドだけの状態の光ファイバーは「裸ファイバー」と呼ばれる。

 ガラスはもろく破断しやすいので、裸ファイバーはシリコーンなどの紫外線硬化樹脂で覆う。このことを1次被覆といい、この状態の光ファイバーは「光ファイバー素線」という。さらに実際に取り回せる強度を確保するために、ナイロン樹脂などで覆う。これは2次被覆と呼ばれる。またこの状態の光ファイバーを「光ファイバー心線」と呼ぶ。心線が光ファイバーを取り扱う上での最小単位となる