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 Part2では、オフィスやデータセンターなどの企業ネットワークで光ファイバーを導入し、運用する際のポイントを解説する。

短距離はMMF、長距離はSMF

 企業ネットワークでは、イーサネットの物理メディアとして光ファイバーを利用する。イーサネットでは規格ごとに、銅線を使ったLANケーブルと光ファイバーのそれぞれに対して、最大伝送速度と最大伝送距離が決まっている。このため必要な伝送速度や距離に応じて、利用する光ファイバーの種類を検討する。

 まずはイーサネット規格と伝送速度、対応する光ファイバーの関係を確認しよう(表2-1)。

表2-1●主なイーサネット規格と光ファイバーの対応
1Gビットから100Gビットまでの主なものを掲載した。IEEEの規格名は最初に策定されたものを取り上げた。イーサネットの規格は一定年ごとにIEEE 802.3として集約される。このほか、IEEEではなく複数のメーカーなどの合意による「MSA(Multi-Source Agreement)」と呼ばれる業界標準もある。
表2-1●主なイーサネット規格と光ファイバーの対応
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 光ファイバーをイーサネットで利用するときは、ネットワーク機器に取り付ける光トランシーバーモジュールと、光ファイバーケーブルをセットで使うことになる。また、トランシーバーとケーブルが一体となった製品もある。この場合はケーブルの長さを変更できない。

 光ファイバーのモードは、短距離の用途にはMMF、長距離の用途にはSMFを選択するのが基本的な考え方だ。SMFに比べてMMFのトランシーバーはかなり安価なので、短距離で済むならMMF対応品を選んだほうがコストが低くなるからだ。

光ファイバーのタイプに注意

 企業ネットワークでMMFを使う際にはタイプの選択に気をつける必要がある。MMFでは「OM」というタイプによって伝送距離が異なるからだ(表2-2)。タイプはOM1からOM5まで5種類があり、数字が大きくなるほど伝送距離が長くなる。

表2-2●光ファイバーのタイプと特性
光ファイバーのタイプはISO/IEC 11801などで規定されている。数字が大きくなるほど伝送性能は高くなる。
表2-2●光ファイバーのタイプと特性
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 新たに光ファイバーケーブルを敷設する場合は、距離に応じた規格を選べばよい。注意が必要なのは、より高速なイーサネット規格を導入する際に、敷設済みの光ファイバーケーブルを使い回そうとするケースだ。

 例として、伝送距離が最大100mのオフィスビルにOM2対応の光ファイバーを敷設し、1Gビットイーサネットの1000BASE-SXを使っているケースを考えよう。OM2を使った1000BASE-SXの最大伝送距離は550mなので問題ない。ところが、これを10Gビットイーサネットにアップグレードする場合、10GBASE-SRの最大伝送距離は82mなので足りなくなる。

 SMFではOS1とOS2という2つのタイプが定義されている。OS1は最大伝送距離が10kmで、通常の用途ではこれで十分だ。OS2は最大200kmなので、超長距離伝送にも使える。