Part4では光ファイバー技術の進化の過程と最新技術を見ていこう。
「波長分散」をなくす
まずは最新技術に至るまでの歴史を概観してみよう(図4-1)。
光ファイバーで使われる光源の波長として最も伝送損失が小さいのは1550nm付近である。ところが、1980年代の半ばまでは1550nmは使われなかった。それは「波長分散」という現象のためだ。
波長分散とは、波長成分ごとに相手に届くまでの時間差が広がり信号の波形がひずんでしまう現象である。光源の波長に幅があり、波長ごとに伝搬速度が異なるために発生する。そこで開発されたのが、単一の波長の光を出せる「DFB-LD▼」というレーザーだ。
さらに波長分散がゼロになる波長を従来の1310nmから1550nmにシフトした「零分散シフトファイバー(DSF▼)」や、波長分散でひずんだ信号波形を補償する「分散補償ファイバー(DCF▼)」が開発された。
DWDMとデジタルコヒーレント
1990年代には、「高密度波長分割多重(DWDM▼)」の登場により、大容量化が進んだ。
DWDMは波長分割多重の一種。波長分割多重では、異なる波長の光に別々の信号を載せ、それらを1本の光ファイバーに流す。
さらに現在では「デジタルコヒーレント」と呼ばれる技術で1波当たり最大400Gビット/秒の大容量化を実現している。この技術では、位相多変調や偏波多重などを組み合わせて1波長で運べる情報を増やしつつ、デジタル信号処理によって波形のひずみを補正する。