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 次に11beの最大の特徴である、30Gビット/秒以上のスループットを目指す技術を紹介する(図3)。

図3●IEEE 802.11beの物理層での高速化効果
図3●IEEE 802.11beの物理層での高速化効果
IEEE 802.11beでは最大帯域幅を320MHz幅に拡大。さらに新たな変調方式として4096QAMを規定した。加えて最大8ストリームだったMIMOの空間ストリーム多重数を16に拡張する。これらによって、IEEE 802.11axの物理層における最大スループット9.6Gビット/秒を、IEEE 802.11beでは4.8倍の46Gビット/秒にできる。
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 11beでは、11axで最大160MHz幅だった帯域幅を320MHz幅に拡大する。これまでの無線LANの帯域幅を振り返ると、IEEE 802.11a/11gでは20MHz幅、IEEE 802.11nはチャネルボンディング機能を導入し、複数チャネルを束ねることにより40MHz幅での通信が可能になった。その後IEEE 802.11ac、11axでは80MHz幅、160MHz幅までの拡張を可能にした。

 さらに新たな変調方式として4096QAMを規定した。これまでの変調多値数は最大1024(10ビット)である。

 加えて最大8ストリームだったMIMOの空間ストリーム多重数を16に拡張する予定だ。11axでは最大8ストリームだった。11beでは、1対1のMIMO伝送となるSU-MIMO、1対多のMIMO伝送となるMU-MIMOどちらにおいても、最大空間ストリーム数が16になる。これらによって、11axの物理層における最大スループット9.6Gビット/秒を、4.8倍の46Gビット/秒にできる。4.8倍の内訳は、2倍(帯域幅)×1.2倍(変調多値数)×2倍(空間ストリーム多重数)である。

 しかし、30Gビット/秒もの超高速通信を実現するにはいくつかハードルがある。まず320MHz幅の帯域拡張だが、これは6GHz帯でのみ利用可能なモードである。現在のところ6GHz帯は海外の一部地域では利用可能だが、日本においては法整備の議論が進んでいる最中だ。

 また4096QAMは、信号を検出するために高い信号対雑音電力比が必要となる。加えて高いハードウエア性能が要求される。空間ストリーム多重数の拡張についても、利用できる空間ストリーム数は搭載するアンテナ数以下になる。このためAPなどに搭載できるアンテナ数が課題になる。

 これらの機能は現状11beではオプション機能として規定されているため、11be対応機器であっても必ずしもサポートされるとは限らない。

 以上のことから、11beにおいては物理層の高速化技術だけでなく、後述する様々な機能が重要な役割を果たすと考えられる。