企業が自社専用の5G(第5世代移動通信システム)ネットワークを構築できる「ローカル5G」。2019年に制度化され携帯大手の商用サービス開始に先駆けて登場したものの、当初は使用できる周波数が100MHz幅と狭かった。
だが2020年12月にはローカル5Gで使える周波数幅が大幅に増加して合計1.2GHz幅となった。これに前後して無線局免許の申請やネットワークの設計・構築などを支援する企業向けのサービスや製品が相次ぎ登場した。ローカル5Gの本格導入に向けた環境整備が急速に進んでいる。
パブリック5Gとどこが違う?
ローカル5Gと「パブリック5G▼」と呼ばれる携帯大手の5Gサービスとの違いを整理しておこう(図1)。
パブリック5Gは、MNO▼(移動体通信事業者)が全国で無線局免許を取得して電波を出し、企業を含めた一般向けに提供する通信サービスである。これに対してローカル5Gは、一般企業が無線局免許を取得して、自社だけに向けて電波を出すプライベートな5Gネットワークを指す。一般企業の代わりに、インテグレーターや通信事業者▼が免許を取得して構築・運用することも可能だ。
MNOであるソフトバンクは「プライベート5G(仮称)」と呼ぶ企業向け5Gサービスを2022年に開始予定と発表している。これはパブリック5Gのインフラを仮想的に分離し、契約企業専用の5Gネットワークとして提供するサービスだ。自営網であるローカル5Gと違って、パブリック5Gと同じインフラを使い、免許を取得するのもMNOとなる。
屋外利用を考えている場合は注意
前述のようにローカル5G用に割り当てられた周波数は当初、28GHz帯の100MHz幅にとどまっていた。そこへ2020年12月に4.7GHz帯の300MHz幅と28GHz帯の800MHz幅が追加で割り当てられ、合計1.2GHz幅を使えるようになった(図2)。
4.7GHz帯は「Sub6」、28GHz帯は「ミリ波」と呼ばれる。Sub6は低い周波数帯を使ってエリアを比較的広く構築できるのに対して、ミリ波は広い周波数幅を使って、より超高速・大容量通信が可能という特性の違いがある。周波数幅が広がっただけではなく、用途によって2つの周波数帯を使い分けられるようになったのもメリットだ。
ただし2020年12月から新たに使えるようになった周波数帯の一部は、屋内限定などの条件が付いている(図3)。屋内外で使えるのは4.8G~4.9GHzと28.2G~28.45GHz。このうち4.8G~4.9GHzは電波の「不要発射▼」に関して制限が設けられている。
28.45G~29.1GHzは、固定衛星業務の地球局からの通信を容認するのであれば屋外で使える。つまり「地球局からの通信がローカル5Gの通信に干渉したとしても仕方ない」という条件付きになる。これは企業がローカル5Gネットワークを先に構築し、後から固定衛星業務の地球局ができた場合も同様だ。この周波数帯は、基本的に屋内限定と考えるべきだろう。
これらの条件を踏まえると、屋外でローカル5Gを使える周波数幅はそれほど広くはない。屋外での利用を考えている企業は注意する必要がある。