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 IPを使う一般的な通信では、IPパケットの送信側と受信側が1対1で通信する。こうした通信方式を「ユニキャスト」と呼ぶ。Webアクセスやメールの送受信などの通信はユニキャストだ。

 ユニキャストは1対1の通信なので、同じパケットを送信する場合にも受信側ごとにパケットを用意して送る必要がある。このため受信側の数が多くなると送信側の処理の負荷が高くなり、ネットワークの帯域も圧迫される(図3-1)。

図3-1●ユニキャストとマルチキャスト
図3-1●ユニキャストとマルチキャスト
ユニキャストは1対1の通信なので、同じパケットを送信する場合にも受信側ごとにパケットを送る必要がある。一方、マルチキャストは経路上のルーターがパケットをコピーして転送するので、送信側は1台分のパケットを送信するだけでよい。
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 こういった場合に有用なのが「マルチキャスト」と呼ばれる通信方式だ。マルチキャストでは、送信側が1台分のIPパケットを送ると、経路上のルーターが受信側の数だけコピーして転送する。このため受信側が多い場合でも、送信側やネットワークにかかる負荷を抑えられる。こうした特性から、多数の相手に同じデータを送信する動画のストリーミング配信やビデオ会議などで活用されている。

 1対多の通信方式には、ブロードキャストもある。LAN内にあるすべての機器にIPパケットを送る場合などに使われる。この方式では、IPパケットを受け取る必要がない機器にも届いてしまうので、ネットワークの帯域を無駄に使うことになる。またルーターを越えてIPパケットを送ることができないので、広範囲での1対多通信ができない。一方のマルチキャストでは、あらかじめ登録された相手にしかIPパケットを送らない。ルーターを越えた広範囲での1対多通信も可能だ。