インター博士 今回は、大問全体のテーマとして取り上げることはそれほど多くないが、設問にはよく出てくる技術を取り上げよう。
ネット君 メインを張るほどではないが頻出ってことですね。何ですか?
インター博士 VRRP▼だ。ここ10年で見ると、令和元年度、平成30年度、平成28年度、平成26年度の試験で出題されている。覚えておくと得点が期待できるぞ。
障害対策には冗長化が必須
ネットワークでは、どれだけ万全を期しても障害が発生することは避けられない。このため障害が発生しても、ネットワークを止めない工夫が求められる。それが冗長化である。
冗長化とは、あえて無駄な部分(冗長な部分)を用意しておくことである▼。ネットワークでは予備機や予備の回線を用意することが該当する。具体的には、サーバーやネットワーク機器などを複数用意する。これにより本番機で障害が発生してもサービスを継続できるようにする。
代表例の1つが、負荷分散装置を使ったサーバーの冗長化だ。同じ動作をするサーバーを複数台用意し、通常時はすべてを同時に稼働させて負荷を分散させる。そしていずれかのサーバーに障害が発生したら、そのサーバーにはアクセスさせないようにする。
STP▼やリンクアグリゲーションといった技術も冗長化に利用できる。STPは、ループ接続を回避するためのプロトコルである。冗長化のために複数のスイッチ間で予備の経路をつくると、ループ接続が発生するので、そのままではブロードキャストストーム▼が発生する。そこでSTPでは、スイッチ同士がループ状に接続されていても、特定の経路を遮断することで、ブロードキャストストームの発生を防ぐ。障害発生時には遮断していた経路を利用可能にして、スイッチ間の通信を継続させる。
リンクアグリーゲションは、複数のケーブルをまとめて1本のケーブルと見なす技術である。主にスイッチ間の経路で使用される。複数のケーブルをまとめることで帯域を増やせる。さらに、1本のケーブルで障害が発生してもスイッチ間の接続は維持されるので耐障害性も高められる。
ルーティングも冗長化技術である。ルーティングは、ルーターで結ばれたネットワークにおいて、パケットの経路を決定するために使われる技術である。送信元から宛先までの複数の経路の中で、最適な経路を決定する。宛先への経路に障害が発生した場合には、別の経路を見つけ出す。つまり、冗長化技術の1つである。
ゲートウエイを冗長化
デフォルトゲートウエイの冗長化もある。クライアントにとってデフォルトゲートウエイは、サブネットの出入り口になる。デフォルトゲートウエイで障害が発生して使えなくなると、インターネットや別のサブネットのサーバーなどに接続できなくなる。このためデフォルトゲートウエイの冗長化は重要だ。
デフォルトゲートウエイを冗長化した場合、現在利用可能なゲートウエイをクライアントに通知する必要がある。通常、デフォルトゲートウエイのIPアドレスはDHCP▼で配布される。このため、いつも使用しているデフォルトゲートウエイで障害が発生した場合には、予備機のIPアドレスをDHCPで知らせる方法が考えられる。
ただしクライアントは、IPアドレスなどのリース期限にならないとDHCPサーバーにアクセスしない。このため、障害発生時にすぐにデフォルトゲートウエイを切り替えるのは難しい。そこでVRRPというプロトコルを利用する。