島根県浜田市の市立中学校が配布した校報に掲載されたURLにアクセスすると、地方テレビ局のWebサイトが表示されるというトラブルが、2019年2月20日に見つかった(図1-1)。
WHOISサービス▼を使って調べたところ、URLに含まれるドメイン「hamada.ed.jp」を所有するのは、島根県の浜田市教育委員会だった(図1-2)。浜田市教育委員会の担当者は当初、「事態を初めて知った。理由が分からない」と話した。何が起こったのだろうか。原因を調査した。
Webサイトは存在しない
浜田市教育委員会のドメインを含むホスト名▼「www.hamada.ed.jp」でテレビ局のWebサイトが表示されるということは、2つの可能性が考えられる。1つはwww.hamada.ed.jpを使って、テレビ局の偽サイトが開設された可能性。もう1つは、www.hamada.ed.jpがテレビ局のWebサーバーのIPアドレスとひも付いている可能性だ。ひも付けとは、ホスト名の名前解決で、DNS▼サーバーがそのWebサーバーのIPアドレスを応答するという意味だ。
名前解決は、nslookupコマンドで実行できる。そこで、www.hamada.ed.jpとテレビ局のホスト名のそれぞれに対して、nslookupコマンドを使って米グーグルのDNSサーバー(8.8.8.8)を指定して名前解決を実行した(図1-3)。どちらも同じIPアドレス(ここでは「X」とする)が返ってきた。
hamada.ed.jpのドメイン情報にあった権威DNSサーバーの「ns2.miracle.ne.jp」と「ns3.miracle.ne.jp」を指定して名前解決を実行しても、IPアドレスXが応答された。権威DNSサーバーとは、特定のドメインに含まれるホスト名のIPアドレスなどを管理するDNSサーバーのこと。名前解決を実行した結果は、権威DNSサーバーが最終的に応答している。
冒頭に取り上げた校報には、中学校のメールアドレスも掲載されていた。そのアドレスのドメインにもhamada.ed.jpが使われていた。メールアドレスのドメインのIPアドレス(MXレコード▼)を調べると、Xとは別のIPアドレスが応答された。
これらの事実を浜田市教育委員会に伝えたところ、新たな事実が分かった。まず、www.hamada.ed.jpは2016年まで使っていたホスト名で、現在は別のドメインのホスト名を使っていること。次に、www.hamada.ed.jpのWebサイトは2016年に閉鎖したこと。最後に、hamada.ed.jpは市内小中学校のメールアドレスのドメインとして継続して利用していることが分かった。