新型コロナウイルスの影響で、ネットワークの利用形態が大きく変わっている。多くの企業ではテレワークの導入によって、これまでは限られた社員だけが使っていたVPNを全社的に利用するようになった。また、教育現場ではオンライン授業の取り組みが始まった。
これに伴い、至る所でネットワークトラブルが発生している。例えば企業によっては、急激に増えたトラフィックをVPN装置が処理しきれず業務を継続できなくなった。
教育現場でも同様だ。多くの学校にとってオンライン授業は初の試みである。トラブルが頻発しているようだ。今回紹介するトラブルはその典型例といえるだろう。
中学3年生の1割が接続できない
トラブルに遭遇したのは、岐阜県輪之内町の教育委員会だ。
輪之内町には町立の学校が小学校3校、中学校1校の合計4校ある。4校のネットワークは同町の教育委員会が管理している。
各校では教員用のパソコンと生徒用の端末(キーボード付きタブレット)などを無線LANアクセスポイント経由でネットワークに接続している。小学校3校のネットワークは輪之内町役場のレイヤー3スイッチに、中学校のネットワークは教育委員会のレイヤー3スイッチにつながっている。教育委員会のネットワークは小学校のネットワークと同じように町役場のレイヤー3スイッチで集約されてインターネット接続回線につながっている。
トラブルは2020年5月18日に発生した。小中学校4校でオンライン授業を開始しようとしたところ、中学3年生の約1割に当たる11人がビデオ会議システムZoomにアクセスできなかったのだ。このため中学3年生のオンライン授業は中止した。
コロナ禍で休業が長引く
輪之内町の小中学校4校でオンライン授業を始めることにした理由は、他の学校と同様にコロナの感染拡大防止のためだ。
2020年3月、コロナのために4校とも春休みまで臨時休業することになった。学校は4月に再開されたものの、8日に緊急事態宣言が発出され再び臨時休業となった。
休業中、4校は地元のCATVを利用した授業放送や学習用プリントで生徒の学習を進めていた。そのころ同町では小中学校の校長による会合(校長会)をオンラインでできないか検討していた。そこで同町のICT教育指導員を務める長屋英人さんはZoom利用を提案した。長屋さんは教育委員会の情報研修室で教育の情報化を担当し、ネットワークも管理している。「スマートフォンで簡単に利用できるので試したところ好評でした。これがきっかけでオンライン授業にもZoomを使おうと考えました」と長屋さんは説明する。