自社の代表番号に社外からつながらなくなった。PBXの故障を疑ったが、レイヤー3スイッチの死活監視ログから、通信が途切れる不具合がネットワーク全体で発生していたことが判明。建物内の配線を疑いベンダーに調べてもらったところ、共用部の光ケーブルが断線していた。
ネットワーク管理者泣かせのトラブルの1つがケーブルの断線である。完全に切れてしまえばネットワーク全体で通信断が発生するので原因を突き止めやすい。だが通信がたまに切れるような状況だと、ケーブルが原因だとは考えにくい。通信が回復すれば、ほとんどの機器は元の状態に戻るからだ。一時的な通信断の影響を受ける機器だけが正常に動作しなくなる。管理者の目には、その機器が故障したように見えてしまい、問題の切り分けを難しくする。
神奈川県のITベンダーであるアイネットの太田宏さんは、まさにそのようなトラブルに遭遇した。すべては「アイネット本社の代表番号に電話がつながらない」という顧客からの連絡で始まった。社内のネットワークはいつも通り稼働しているので太田さんはPBXを疑った。だが、太田さんの予想は大きく外れることになる。
開発拠点にも社内システムの機器
トラブルの舞台になったのはアイネットの本社および開発拠点である。アイネットは神奈川県横浜市のオフィスビルの23階に本社を構えており、コーポレート部門などが置かれている。そのほか県内に複数の開発拠点がある。本社および開発拠点間は広域イーサネットで接続している。
社内システム用の機器は本社だけではなく、一部の開発拠点にも設置している。例えばIP電話の呼制御は、ある開発拠点(以下、開発拠点A)に設置したPBXが担う。アイネットは業務用の電話環境として、IP電話システムを構築している。また同システムでは、本社に「リモートシェルフ」とPBXバックアップサーバーを設置している。リモートシェルフは外線通話を提供する機器。PBXバックアップサーバーは、PBXの障害時に呼制御を代替する機器である。
本社が入居しているビルには、一般的なテナントビルと同様に、各階に配線を通すためのEPSと階ごとに配線を束ねる中間配電盤(IDF)がある。
23階にある本社居室内のONUは、同じ階にあるIDFに光ファイバーケーブル(光ケーブル)でつながる。光ケーブルは、居室と共用部廊下の床下に敷設されている。
IDFからの光ケーブルはEPSを経由して、地下の主配線盤室(MDF室)内のMDFにつながる。ビル内のすべてのテナントのインターネット回線はこのMDFに集約され、通信事業者の収容局などにつながる。