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データセンターに設置したサーバーのファイルを開こうとすると突然時間がかかるようになった。調査をすると、社内ネットワークとデータセンターをつなぐ経路上に問題があることが分かった。インターネット接続回線を契約しているプロバイダーを変更してトラブルを解消した。

 社内で運用しているオンプレミスのサーバーをクラウド環境に移行する企業が増えている。運用コストを抑えられるし、ネットワーク管理者の負担を軽減できるといったメリットがある。しかしクラウドを利用したシステムでトラブルが発生すると自社で調査できる範囲が限定されるので、原因の特定に時間がかかるようになる。

 管理者はまず、社内に設置された機器の故障や設定ミスがないか確認し、ケーブルの断線や接続ミスなどを疑う。社内に原因が見つからなければ、社内とクラウドのサーバーをつなぐインターネット回線に問題がないかを確認する。もし問題が社内のネットワークで見つからなければ自社での対応が難しく、解消に時間を要するだろう。

 今回紹介するトラブルがまさにそうだった。原因は社外のネットワークにあった。管理者はどのような方法でトラブルの原因を見つけ出し、解消までこぎ着けたのか。その一部始終を見ていこう。

 トラブルの舞台となったのは、企業のシステム開発などを手がける「システムハウス.アイエヌジー」の本社だ。

ほとんどのサーバーをクラウドに移行

 同社は2019年3月からオンプレミスの業務用サーバーをクラウド環境に移行し始め、2020年までにサーバーのほとんどを移した。社内で運用するのは、ユーザー認証に使うActive Directoryのサーバーと、顧客のシステムの開発や検証に使うサーバーだけである。

トラブル発生時のシステムハウス.アイエヌジーのネットワーク構成
トラブル発生時のシステムハウス.アイエヌジーのネットワーク構成
VPNルーターを設置して支社やクラウド上のサーバーとVPNで接続していた。2020年2月3日の朝、入江さんがクラウド上のファイルサーバーにアクセスすると、ファイルの読み込みにいつもより時間がかかった。
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 本社とクラウド事業者のデータセンターはインターネットVPNサービスで接続した。VPNサービスはクラウド事業者が提供するが、利用には別途インターネット接続回線が必要になる。同社ではプロバイダーAの回線を契約していた。

 国内にある支社との間は自前で構築したインターネットVPNでつなぎ、支社からは本社を経由してデータセンターのサーバー群にアクセスするようにしていた。

 2020年2月3日の朝、同社の社内システムを管理する入江 直之さんは、本社のパソコンでクラウド上のファイルサーバーにアクセスし、サーバーに置かれたExcelファイルを開こうとした。

 ところが、普段ならすぐに開くはずのファイルがなかなか開かない。「これまで見たことのないExcelの進捗バーが表示されました」と入江さんは当時の状況を説明する。進捗バーは、Excelのファイルが開くまでに時間がかかる際に表示されるバーである。めったに目にすることはないが、処理性能の低いパソコンで容量の大きいファイルを開くときに見かける。

 Excelファイルが開くまでに10秒ほどかかった。他のファイルでも試したが同様だった。