オフィスの無線LANに接続できなくなったり、通信が突然途切れたりするトラブルに遭遇したことはないだろうか。多くの人は、こうしたトラブルに遭遇するとまず、パソコンやスマホのOSの無線LANに関する設定が正しいかどうかを確認するはずだ。無線LANルーターの電源が入っているかどうかや、設定が正しいかどうかを確認する人もいるだろう。
しかし時として、OSや無線LANルーターをチェックしてもトラブルの原因が見つからないことがある。今回はそうしたトラブルを紹介しよう。パソコン周辺機器の動作に必要なユーティリティーソフトが原因だったとみられるケースだ。果たして、どこをチェックして、どのように考えながらトラブルの原因を絞り込んでいったのだろうか。
最新規格対応の無線LANを導入
ADINはネットワークセキュリティーに関するシステム開発などを手掛ける企業である。今回紹介するトラブルに遭遇したのは、同社の最高技術責任者(CTO)である鈴木 伸治さんだ。東京にあるオフィスに勤務し、暗号通信システムの開発などを担当している。
鈴木さんが勤務するオフィスでは、2020年の第2四半期ごろに無線LANを新規導入した。具体的には、中国ティーピーリンク(TP-Link)の無線LANルーター「Archer AX50」(以下、AX50)を購入して設置した。
AX50は現行の最新規格であるIEEE 802.11ax(Wi-Fi 6)に対応している。この製品の最高伝送速度(理論値)は、5GHz帯が2402Mビット/秒、2.4GHz帯が574Mビット/秒である。つまり5GHz帯のほうが速い。同社は、IEEE 802.11axの高い通信速度に期待してAX50を導入した。そのため、通信速度が低い2.4GHz帯は使わず、高速に通信できる5GHz帯だけで使用している。
この無線LANルーターに、鈴木さんはWindows 10を搭載した複数台のデスクトップパソコンやノートパソコンと、複数台のMacをつないで使い始めた。無線LANの使用開始に合わせて、WindowsパソコンにIEEE 802.11axに対応する無線LANアダプターを取り付けた。