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小売事業者向けSaaSにおいて、利用中に接続が切れるトラブルが発生した。プロキシーサーバー経由だと通信終了時にエラーが発生する場合がある。WebサーバーのHTTP/2対応が原因だと推測。HTTP/2の接続維持時間を延長してエラーの発生頻度を大幅に下げた。

 現在では多くの企業が業務でSaaSを利用している。人気のSaaSだが、トラブル対応には注意が必要だ。システムはSaaS事業者任せなので、トラブルが発生しても利用者ではどうにもならないケースがある。SaaS事業者としてはいち早くトラブルを解決しないと、利用者の事業継続に影響を与えてしまう。

 SaaSにまつわるトラブルは悩ましい。今回紹介するトラブルもまさにそうだった。

複数の事業者からトラブルの報告

 トラブルに見舞われたのは、ドリーム・アーツが小売事業者向けに提供する店舗業務支援SaaS「Shopらん(以下SaaS)」を利用する一部の企業だ。

 SaaSは複数のWebサーバーで構成される。利用者はインターネット経由でこれらのWebサーバーへ接続する。接続元となるのは小売事業者の本部や店舗だ。

トラブル発生時のネットワーク構成
トラブル発生時のネットワーク構成
SaaSにはインターネット経由で接続する。各店舗がそれぞれ接続するケースもあれば、事業者のネットワークに設置したプロキシーサーバー経由で接続するケースもある。
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 同社が最初にトラブルに気づいたのは2021年10月6日のことだ。SaaSを利用する小売事業者の1社から、SaaSにうまく接続できないという連絡があった。同様の連絡は、他の複数の小売事業者からも寄せられた。

SaaSの利用中に接続が切れるトラブルが相次ぐ
SaaSの利用中に接続が切れるトラブルが相次ぐ
複数の小売事業者から、SaaSとの接続が切れるといったトラブルが相次いで報告された。
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 トラブルにはドリーム・アーツのCTOである石田 健亮さんが対応することになった。

 石田さんはまず状況を整理した。各社で発生しているトラブルの内容は同じだった。「SaaSの利用中に接続が途切れる。だが発生頻度は高くない」「Webブラウザーには『502 Bad Gateway』というエラーが表示される」「Webブラウザーを更新すると接続できるようになる」などだった。

 石田さんを悩ませたのは、トラブルが発生している事業者の共通点が見当たらなかったことだ。

トラブルが発生した事業者の規模や接続環境はバラバラ
トラブルが発生した事業者の規模や接続環境はバラバラ
原因究明に乗り出した石田さんは、トラブルが発生している事業者の共通点を探そうとした。だが事業者の規模や接続環境はバラバラだった。
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