SOHOや中堅・中小企業では、家庭用のネットワーク機器を利用しているケースが少なくない。特に無線LANルーターは、家庭用でも最新の通信規格やセキュリティー機能に対応している製品が多い。市場規模の大きさから、業務用よりも先に最新機能が搭載されることもある。業務用に比べて価格も安いので、部署レベルのネットワークに導入されがちだ。最新の技術を試したいエンジニアにとっても、魅力的な選択肢に映ることもあるだろう。
しかし、家庭用のネットワーク機器を業務で利用すると、思わぬトラブルを招くことがある。ハードウエアの信頼性や稼働の安定性が業務用ほどは高くないからだ。アクセスが多すぎて挙動が不安定になったり、定期的に再起動しないとつながりにくくなったりすることがままある。メーカーの技術サポートも業務用に比べると手厚くはない。
木材専門商社の櫻井木材で社内システムエンジニア(SE)として働く都築 隆さんも、こうした家庭用機器のトラブルに遭遇したエンジニアの1人だ。同社の拠点でレイヤー2(L2)スイッチとして利用していた無線LANルーターが故障し、拠点内のネットワークがまひするという事態に見舞われた。しかもちょうどそのとき、同社は拠点間の通信回線を切り替えるところだった。都筑さんはどのようにして原因を突き止めたのだろうか。
広域イーサネットの増速を予定
今回のトラブルが発生したのは2015年6月25日。都築さんは普段、名古屋市にある同社本社に勤務しているが、その日は拠点間をつなぐ通信回線の切り替えのために愛知県海部郡飛島村の同社拠点(飛島事務所)を訪れていた。同社ではインターネット接続回線とは別に、中部テレコミュニケーション(CTC)の広域イーサネット「EtherLink」を用いて本社と飛島事務所を接続している。飛島事務所の利用者は広域イーサネットを経由して、本社のメールサーバーやファイルサーバー、業務アプリケーションのサーバーなどにアクセスする。
当初は、EtherLinkの「10Mbps/1Mbps保証」の回線で本社と飛島事務所の間をつないでいた。これは、網内がすいている場合には最大10Mビット/秒で利用することができ、混んでいる場合でも1Mビット/秒の速度を保証するサービスだ。しかし、ネットを利用する業務が増えて大容量ファイルなどをやりとりするようになったことから、「拠点間の通信速度が遅い」といった不満の声が上がるようになっていた。そこで、広域イーサネットを増速することにした。「他のサービスに乗り換えることも検討しましたが、CTCから通信料金は据え置きでよいという提案を受けたので、最大速度が100Mビット/秒の『100Mbps/1Mbps保証』の回線に切り替えることにしました」(都築さん)。