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内線として使っていたIP電話機で通話ができなくなった。当初はPBXメーカーに頼り、PBXの部品を交換してもらったが障害は収まらなかった。そこで他のハードウエアを交換したり、IPアドレスの割り当て方法を変えたりしたが解決できなかった。最後の手段としてパケットキャプチャーやログで通信内容を調べたところ、意外な事実が明らかになった。

 ネットワークシステムでトラブルが発生すると、最初に頼るのはネットワーク機器のメーカーになりがちだ。ところが、トラブルの原因がネットワーク機器にない場合、原因を突き止めるのが遅れてしまう。今回紹介するのはそうした事例だ。

PBXとIP電話機を導入

 トラブルに遭遇したのは、インテグレーターであるフォーアスマイルで技術部長を務める桑原 尚司さんだ。ある顧客企業で同社が構築したIP電話が突然使えなくなった。

 顧客は東京都に本社がある企業で、税理士や社会保険労務士など、いわゆる「士業」を総合的に手掛けている。この企業では、2012年に内線電話をIP電話に切り替えた。このIP電話システムの構築をフォーアスマイルが受け持った。

 この顧客ではIP電話の導入に当たり、ある大手メーカー(以降、PBXメーカー)のPBXを選択した。IP電話機も同じメーカーの製品だ。PBXは装置全体の処理を担うCPUユニット、IPパケットの転送やフィルタリングなどを実行するルーターユニット、SIPによる呼制御などを実施するVoIPユニットなどから構成される。

トラブルの舞台となった 顧客のネットワーク構成
トラブルの舞台となった 顧客のネットワーク構成
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 本社のサーバールームにはPBXのほか、インターネットの光回線をつなぐためのONU、構内のスイッチ群を束ねるセンタースイッチがある。センタースイッチの先には、各階に設置したフロアスイッチやPoEスイッチがつながる。IP電話機にはPoEスイッチを使って給電している。

 インターネットを経由して、外部の拠点(サテライトオフィス)ともつながっている。そこにもIP電話機を置き、本社のIP電話機と内線通話ができるようにしている。

 インターネットの光回線にはNTT東日本のフレッツ 光ネクストを採用。最大通信速度が200Mビット/秒のプランを契約しており、IP電話に使う帯域としては十分だという。

 なお顧客では、IP電話用のネットワークと、パソコンなどをつなぐ情報系のネットワークを完全に分離している。重要なデータをやりとりするネットワークは他と分けるべきだとTKCからアドバイスを受けて分離した。顧客ではTKCが会計事務所向けに提供している情報サービスを利用している。