トラブルが発生した際に、症状が出た場所と原因になった場所が離れていることはよくある。例えば別のフロアだったり、隣の建物だったりする。しかし、今回のトラブルでは両者の距離は想像できないほど離れていた。
複合機でスキャンだけができない
トラブルに遭遇したのは、立山黒部貫光と立山貫光ターミナルのネットワークを運用管理している石倉豊さんだ。立山黒部貫光は、ケーブルカーやロープウェーなどの交通機関を運営している。一方、立山貫光ターミナルは、交通機関の駅の近くにあるホテルやレストランを経営している。
2社の本社は富山駅前の同じビルにあり、立山駅から黒部湖駅までの7つの駅に拠点がある。本社に勤務する従業員は基本的に両社を兼務している。駅の拠点に勤務している従業員は、業務に応じて所属する企業が分かれている。
本社と7つの駅の1つである立山駅の間は、インターネットVPNで接続している。本社はNTT西日本のフレッツ回線で接続しているが、立山地区にはフレッツ回線がないため、立山駅はケーブルテレビ(CATV)回線で接続している。7つの駅は自社で敷設した約30kmの光ケーブルで接続している。
2社は、この巨大なネットワークをVLAN(Virtual LAN)で分割して利用している。立山駅には、「業務1」と「業務2」という2つの業務用のルーターが設置されている。それぞれの業務に対応するVLANに対して、ルーターが内蔵するDHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)サーバー機能がIPアドレスを割り当てている。
立山駅のレイヤー3(L3)スイッチは各駅のレイヤー2(L2)スイッチと光ケーブルで結んでいる。これらのスイッチはメディアコンバーターを介して光ケーブルと接続している。
立山駅以外の6駅は、毎年12月1日から4月中旬までの冬期は閉鎖される。6駅にある合計約100台の業務用パソコンは、毎年、冬期の閉鎖時に富山市稲荷町にある営業拠点の事務所に移される。一方、スイッチなどのネットワーク機器はそのまま駅の拠点に残される。
トラブルが起こったのは、6駅が閉鎖されてから間もない2018年12月上旬だ。立山駅の駅務室から本社の石倉さんに「複合機でスキャンしたデータがパソコンに届かなくなった」という電話連絡が入った。症状は出たり出なかったりするという。不思議なことに、パソコンからのデータは複合機で問題なく印刷できていた。