ネットワーク機器の設定が誤っていても、顕在化しないケースは少なくない。例えば機器の負荷が高まっていても、問題なく動作していれば管理者は気づきにくい。
だが、別のネットワーク機器の更改や設定変更などを契機に、意外なトラブルとして顕在化する場合がある。今回紹介するトラブルはまさにそうだった。無線LANのトラブルの原因が、レイヤー3(L3)スイッチのルーティング設定の誤りだったのだ。
担当者は、この意外な原因にどうたどり着いたのか。その一部始終を解説する。
複数の拠点で無線LANが不調に
トラブルに遭遇したのは、三井情報のソリューション技術本部次世代基盤第一技術部第一技術室の木村 浩基さん。今回のトラブルは2020年12月に発生した。木村さんはサービス業A社のネットワーク管理者から、「社内の無線LAN環境を調査してほしい」と相談を受けた。
A社は数千人の社員を抱え、全国に拠点を置く。多くの社員が通う本社と拠点aが主要拠点で、その他に中小規模の地方拠点が複数ある。システム開発部門があり、開発環境を拠点aと各地方拠点に備える。拠点aと地方拠点の間は広域イーサネットで、拠点aと本社は専用線でそれぞれ接続する。A社の社員は各拠点で、端末を無線LANに接続し業務に当たっている。
A社のネットワーク管理者が木村さんに調査を依頼したのは、無線LANに関する苦情が複数の拠点から寄せられたためだ。
木村さんはどこでどんな問題が起きているのかを絞り込むため、A社の了解を得て「無線LANの利用で困っていること」を調べる全社アンケートを実施した。集まった声を取りまとめると、「本社と拠点aの無線LANが遅い」「拠点aの無線LANにつながりにくい」に問題を絞り込めた。