
ここは、ネットワーク関連企業「BPネットワークス」が誇る本社の超高層タワービル…の地下3階、機械室の隣にある第二R&Dセンターである。スマートフォンを見つめながら、何やら困り顔をしている神崎君の姿が。
神崎:困ったな(今晩初めてのデートなのに、スマートフォンのバッテリーが残り20%を切ってしまった…)。
矢田:どうしたの?
神崎:スマートフォンを充電するためのケーブルを家に忘れてきちゃって。
片岡:電池切れか。じゃあ、これを使えばいい。最近のiPhone▼なら使えるはずだ。
神崎:これはワイヤレス充電器ですね。確かQi▼と呼ばれている規格のやつだ。
片岡:さっき吉田から、「試してみて」と預けられたんだ。その台の上に対応しているスマートフォンを置けば充電できるはずだぞ。ほら、俺のiPhone 8を置くと…(ポン)。
神崎:本当だ。充電マークが点灯しました。
矢田:ケーブルがいらないのは便利そうね。これって、電磁波で充電するんですよね。
片岡:電磁波というよりは、磁界を使っているらしい。
神崎:そうなると、ネットワークのそばで使っても大丈夫なのかな。充電中に発生する磁界が無線LANや有線LANの通信に影響を与えそうな気がします。スマートフォンや携帯電話の通信にも影響がありそうです(図1)。
片岡:その点は俺も気になって、実験してみたんだ。だけど、充電中でも無線LANのスループットは低下しなかったぞ▼。
矢田:そりゃそうよね。もしワイヤレス充電で無線LANの通信に影響を与えてしまったら、製品として失格ね。
片岡:そのあたりは、きちんと考えて設計されている。ワイヤレス充電の磁界で発生する周波数帯は110k~205kHzと決まっているようなので、無線LANで使っている2.4GHz帯や5GHz帯には影響しにくいのだろう。
神崎:それじゃ、僕のiPhoneも充電させてもらおうっと。あれ、全然反応しないぞ。
片岡:iPhone 8以降なら充電できるはずだ。
神崎:わーっ、残念。僕のはiPhone 7だった。
iPhone 8以降のiPhoneは、ワイヤレス充電規格のQiに対応している。
WPC(Wireless Power Consortium)が策定したワイヤレス充電の国際標準規格。電磁誘導方式を使用する。周波数帯は110k~205kHzの間で、標準では5Wの電力で充電する。
筆者がiPhone 8を使い、Wi-Fiのリンク速度測定アプリ「Wi-Fi SweetSpots」で無線LANルーター間のスループットを調査した。IEEE 802.11ac対応の無線LANルーター(アイ・オー・データ機器のMN-AX2033GR)を使用して計測したところ、ワイヤレス充電中でも700Mビット/秒以上と、通常時とほとんど変わらないスループットとなった。