
ここは、ネットワーク関連企業「BPネットワークス」が誇る本社の超高層タワービル…の地下3階、機械室の隣にある第二R&Dセンターである。平成生まれの矢田さんと神崎君が「平成のネットワーク史」という記事を読んでいる。
神崎:へーっ、平成元年(1989年)って、同軸ケーブルでイーサネットを使っていた時代なのか。無線LANなんて、まだ影も形もない▼。
矢田:Web▼もなくて、主にメールとTELNETを使っていたのね。
片岡:TCP/IPも今のような標準的な存在ではなく、いろいろある通信プロトコルの1つ▼という位置付けだったな。
矢田:それが、1995年にWindows 95が登場してインターネットブームに一気に火が付いて今に至るのね。
神崎:こうしてみると、平成の30年って、ネットが爆発的に進化した時代なんですね。
3人が平成を振り返っていると箱を抱えた吉田さんがやってきた。
吉田:はーい、みなさん。平成の話で盛り上がっているところ悪いけど、お仕事よ。
神崎:その箱、もしや新型の?
吉田:そう。最新無線LAN規格のIEEE▼ 802.11ax(以下、11ax)に対応した台湾エイスースの無線LANアクセスポイントよ。まだ、ドラフト準拠だけどね。
片岡:今回はこれの実験か?
吉田:ノートパソコンから見えない無線LANアクセスポイントがあるから調べてほしいって、B社から依頼があったの(図1)。
矢田:ノートパソコンから見えないっていうのは、認識できないということ?
吉田:ええ。スマートフォンからはつながる無線LANアクセスポイントが、なぜかノートパソコンからは認識できない謎の現象が発生するようなのよ。それが、どうも11axが関係しているらしいの。
神崎:それで、11axのアクセスポイントで実際に試すんですね。
吉田:そういうこと。今回のセンター長からの依頼は「パソコン(PC)からは見えない無線LANを調査せよ!」よ。アクセスポイントは11axが有効な状態で、すぐ使えるようになっているわ。B社が使っているのと同型のノートパソコンも用意したから、実際に現象が発生するのか、試してみて。じゃあ、実験お願いね。
そう言うと、いつものように仕事を押しつけて帰っていった。
無線LANの標準規格であるIEEE 802.11が最初に策定されたのは1998年(平成10年)。
スイスの欧州原子核研究機構CERNがWorld Wide Webを始めたのは1991年(平成3年)のこと。これが爆発的に広がり、インターネットが世界中に普及した。
当時のパソコン向けネットワークは、米ノベルのNetWareや米IBMのトークンリング、米マイクロソフトのMSNetworks、米アップルのAppleTalkなど、それぞれベンダー独自の通信プロトコルを使っていた。
Institute of Electrical and Electronics Engineersの略。