
ここは、ネットワーク関連企業「BPネットワークス」が誇る本社の超高層タワービル…の地下3階、機械室の隣にある第二R&Dセンターである。みんなは今日の新聞を取り囲み、IT関連のニュースをチェックしている。
矢田:へぇ~、ルイヴィトンがIoT▼のサービスを始めるのか。
神崎:カバンのメーカーがIoTとは不思議ですね。
片岡:どれどれ。「ルイヴィトンのEchoはスーツケースの内側に取り付けるスティック型のデバイスで、LPWA▼のSigfox▼を使っている」ということらしい。
神崎:なるほど。Sigfoxを使ってカバンを追跡するサービスですか。
矢田:要は、荷物が世界のどの空港のどこにあるのかがわかるサービスね。手違いで、手荷物が別の空港に到着してもわかるのね。
神崎:革のカバンとかならいいけど、金属製のスーツケースだったら電波が飛ばないのでは?
矢田:Sigfoxは情報が少ないから、よくわからないわ。
そこへ、いつものように吉田さんがやってきた。
吉田:Sigfox?ちょうどよかった。今回の大石センター長からの依頼は「Sigfoxを使った通信の特徴を調査せよ!」よ。
神崎:そもそもSigfoxの概要も知らないんですけど。
吉田:だから資料を持ってきたわ。Sigfoxのネットワーク構成はこんな感じね(図1)。
神崎:どれどれ。通信スペックは…、1回に送れるデータが12バイト、通信速度が100ビット/秒(bps)って遅過ぎですね。
矢田:1日の送信回数が140回という制限もあるわ。
神崎:制限が厳し過ぎですよ。
片岡:その分、通信料金が安いからな。
矢田:通信は基本的に上りだけ。
神崎:下りはできないんですか?
吉田:ええ、Sigfoxは上りに特化していて、原則としてACK応答▼にも使えないわ。
矢田:それじゃ、基地局にメッセージが確実に届いたかどうか、端末側でわからないのでは?
吉田:2017年10月の法改定で、下り通信もできるようになったから、ACK応答を返すことは不可能ではないわ。でも下り通信には、送れるデータ量が1回8バイト、送れる回数は1日4回という、さらに厳しい制限があるわ。このため実際には、ACK応答に使うのは難しいわね。
片岡:1日たった4回だけ…。使えねぇ~。
Internet of Thingsの略。
Low Power Wide Areaの略。
2009年からフランスSIGFOX社がグローバルに提供するIoT向け通信サービス。LPWAネットワークに分類され、省電力・広域の通信で低速小容量かつ低コストなのが特徴。Sigfoxネットワークの構築運用は、一つの国を1社の事業者が専任で当たるビジネスモデルになっている。日本では京セラコミュニケーションシステム(KCCS)が担当している。
ACKはACKnowledgementの略。データが正常に届いたことを受信側から送信側に伝える応答のこと。