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インター博士 ネット君にさっき設定してもらったパソコン。IPアドレスが別のパソコンと重複しているぞ。

ネット君 あれ?何で?

インター博士 何でも何も。単なるミスだろ。

ネット君 そ、それは…。でもIPアドレスが重複していると、何がまずいんですかね?

 DHCPのおかげで、パソコンやスマートフォンといった端末のIPアドレスは自動的に設定される。だがルーターなどのネットワーク機器は、基本的に手動でIPアドレスを設定する。端末であっても、DHCPを使っていない環境では同様だ。

 手動設定で注意すべきはIPアドレスの重複である。IPアドレスの振り分けミスや入力ミスにより、別の機器が使用しているIPアドレスを設定する可能性がある。

 IPアドレスが重複しているとどのような問題が発生するのか。順を追って説明しよう。

解決したアドレスはキャッシュされる

 有線(イーサネット)でも無線LANでも、同じネットワークに存在する機器にパケットを送る場合には、宛先をMACアドレスで指定する。このためIPアドレスからMACアドレスを調べる必要がある。そのためのプロトコルがARPである。IPアドレスからMACアドレスを調べることはアドレス解決という。

 送信元は、送信元のIPアドレスおよびMACアドレス、MACアドレスを問い合わせたい宛先IPアドレス(目標IPアドレス)などを格納したARP要求をブロードキャストする(図1)。

図1●ARPでIPアドレスからMACアドレスを求める
図1●ARPでIPアドレスからMACアドレスを求める
ARPによるアドレス解決の流れ。送信元はIPアドレスを格納したARP要求をブロードキャストで送信。そのIPアドレスが割り当てられている機器は自分のMACアドレスを格納したARP応答を返す。またARP応答を送受信した機器は、対応するIPアドレスとMACアドレスをARPキャッシュに登録する。
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 ARP要求を受け取った機器は、目標IPアドレスが自分のIPアドレスだった場合、自分のMACアドレスを格納したARP応答を送信元に返す。

 ただ、毎回アドレス解決をするわけではない。ARPにはキャッシュの仕組みがあり、一度問い合わせた情報は一定期間登録して参照する。ARP応答を受け取った送信元は、ARP応答によって知ったMACアドレスとIPアドレスの対応をARPキャッシュに登録する。

 またARP応答を送った機器は、ARP要求の送信元のIPアドレスとMACアドレスをARPキャッシュに登録する。なおARP要求の情報を登録するのはARP応答を送った機器だけ。ARP応答を送っていない機器は、ARP要求の情報を登録しない。

 アドレス解決したい機器は、まずはARPキャッシュを確認する。宛先IPアドレスに対応するMACアドレスがない場合には、前述のようにARP要求を送信する。