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 国内外のセキュリティー組織は2020年12月中旬以降、米ソーラーウインズのネットワーク管理ソフト「Orion Platform」を悪用したサイバー攻撃が相次いでいるとして注意を呼びかけている。Orion Platformはネットワーク管理ソフトで世界シェアトップ。

 特に米国での被害が大きいとみられる。米メディアによると、複数の米国企業および組織が被害に遭っているという。それを裏付けるように、米国土安全保障省のサイバーセキュリティー・インフラストラクチャー・セキュリティー庁(CISA)は米国時間2020年12月13日に緊急指令を発令図1)。政府機関に対して影響を受ける製品の即時利用停止を命じた。

図1●政府機関に該当製品の利用停止を命令
図1●政府機関に該当製品の利用停止を命令
米国土安全保障省サイバーセキュリティー・インフラストラクチャー・セキュリティー庁(CISA)が米国時間2020年12月13日に発令した緊急指令「21-01」。影響を受ける「Orion Platform」の即時利用停止を政府機関に命じた。(出所:米国土安全保障省)
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 今回の攻撃はいわゆる「サプライチェーン攻撃」だといわれている。サプライチェーン攻撃と呼ばれるサイバー攻撃には2種類ある(図2)。1つは、攻撃目標とする企業の周辺企業を狙う攻撃である。製品やサービスのサプライチェーン(供給網)に関わるグループ会社や子会社、取引先といった周辺企業に侵入し、それらを足がかりに攻撃目標の企業に不正侵入する。

図2●サプライチェーン攻撃は2種類ある
図2●サプライチェーン攻撃は2種類ある
サプライチェーン攻撃は2種類ある。1つは、サプライチェーン(供給網)に関わる周辺企業にまず侵入し、そこを足がかりに攻撃目標の企業に侵入する攻撃。もう1つはソフトウエアや機器の提供元に侵入してそれらにマルウエアを仕込む攻撃である。
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 もう1つはIT機器やソフトウエアの製造や保守の工程を悪用する攻撃である。機器やソフトウエアの提供元に侵入して、それらにマルウエア(コンピューターウイルス)を仕込む。

 機器やソフトウエアの更新プログラムを配布するサーバーに侵入し、更新プログラムにマルウエアを仕込む攻撃もある。正規の更新プログラムにマルウエアが含まれるので防御が難しい。今回のOrion Platformを悪用した攻撃はこれに該当するとみられる。Orion Platformの更新プログラムにマルウエアが仕込まれていたとされる。

 今回と同様の手口は、2017年にはパソコン最適化ツール「CCleaner」、2019年には台湾エイスースのソフトウエア更新ツール「ASUS Live Update Utility」を悪用した攻撃でも使われた。