日本の多くの家庭や企業には「スマートメーター」と呼ばれる電子式の電力メーターが設置されている(図1)。スマートメーターでは各家庭や企業が消費電力量を遠隔監視できる。東京電力が2014年に導入を始めたことをきっかけに、従来のアナログ方式からの置き換えが全国で進んでいる。
現在、2025年度からの導入に向けて、次世代のスマートメーターの仕様策定が大詰めを迎えている。2021年12月中旬に資源エネルギー庁が開催した「次世代スマートメーター制度検討会」による議論の結果、家庭向けのスマートメーターと住戸内のエネルギー管理システム(EMS▼)を接続する「Bルート」において無線LANを使用することが決まった。スマートメーターが無線LANに対応することで、消費電力量のデータ活用などに向けた利便性が大きく向上しそうだ。
「Bルート」の活用促進を狙う
電力メーターの使用期限は最長10年と法律で定められている。東京電力が2014年に導入した現行型の交換が必要になるため、当初は2024年度から次世代型への置き換えを始めることを予定していた。しかし、次世代型の仕様案の議論を踏まえてスケジュールを精査した結果、1年遅らせることになったという。
スマートメーターの通信ルートは、電力やガス事業者側でメーターを管理する「メーターデータ管理システム(MDMS▼)」とつながる通称「Aルート」と、住戸やビルのEMSにつながるBルートの2つがある(図2)。スマートメーターの検針値のデータをBルート経由でEMSに送信して、消費電力の見える化やデマンドレスポンスなどに役立てる。EMSは住戸やビル内のエネルギーの使用状況をリアルタイムに把握して管理する。家庭向けを「HEMS▼」、ビル向けを「BEMS▼」と呼ぶ。
現行のスマートメーターのBルートでは「Wi-SUN」という通信規格が使われている。
ただし、この規格に対応するHEMS機器がほとんど普及していないので、一般家庭のスマートメーターではBルートがあまり活用されていなかった。そこで次世代の家庭向けスマートメーターには一般家庭で広く使われている無線LANを活用して、Bルートの活用促進を狙う。