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 セキュリティー企業のトレンドマイクロは、ソフトウエアの脆弱性を攻撃するツールの売買状況をまとめたリポートを公表した。

 脆弱性を攻撃するツールはエクスプロイトと呼ばれる。エクスプロイトを使えば、企業ネットワークに不正侵入したり、他人のコンピューターを乗っ取ったりすることができる。つまり、スキルのない人間でもサイバー攻撃が可能になる。実際、多くのサイバー攻撃で使われている。サイバー空間のセキュリティーを脅かす危険な存在といえるだろう。

 エクスプロイトは、会員制のアンダーグラウンドフォーラム(サイバー犯罪者などが集う掲示板サイト)などで売買されている。そこでトレンドマイクロは2019年1月から2020年12月までの2年間にわたって、広く知られているアンダーグラウンドフォーラムの「XSS」と「Exploit」に潜入し調査を実施。今回その結果を公表した。同社のリポートを基に、エクスプロイト売買の実態をひもとこう。

この製品と脆弱性が狙われる

 フォーラムには、エクスプロイトの購入を希望する「購入者」と、販売を希望する「販売者」の書き込みがあふれている(図1)。それぞれ、エクスプロイトの種類や価格などを提示している。

図1●アンダーグラウンドの掲示板サイトで売買
図1●アンダーグラウンドの掲示板サイトで売買
攻撃ツール(エクスプロイト)は、会員制のアンダーグラウンドフォーラム(サイバー犯罪者などが集う掲示板サイト)などで売買されている。画像は、米シスコシステムズ製品の脆弱性を突く攻撃ツールを1000ドルで販売するという書き込み。(出所:トレンドマイクロ)
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 種類別に見ると、購入希望と販売希望のいずれでも、米マイクロソフト製品の脆弱性を突くエクスプロイトの書き込みが多かった。ユーザー(攻撃対象)が多いためだ。購入希望では46.3%、販売希望では52.1%を占めた(図2)。

図2●攻撃対象とする製品の内訳
図2●攻撃対象とする製品の内訳
トレンドマイクロの資料を基に作成した。左が購入者が希望するエクスプロイトが狙う製品、右が販売者の宣伝するエクスプロイトが狙う製品の割合。いずれも米マイクロソフトの製品が多くを占める。なお四捨五入の関係で割合の合計が100%にならない場合がある。
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 次に、エクスプロイトが突く脆弱性の公表時期を見てみよう。脆弱性が新しければ新しいほど、ユーザーによるパッチ(修正プログラム)の適用が間に合っていない可能性が高い。このため、最新の脆弱性を突くエクスプロイトが多いように思える。

 だが実際にはそうではなかった。調査を開始した2019年1月よりも前に公表された脆弱性が多かった(図3)。2018年以前の脆弱性を悪用するエクスプロイトが、購入希望では34.3%、販売希望では47.0%に上った。

図3●攻撃対象とする脆弱性の公表年
図3●攻撃対象とする脆弱性の公表年
トレンドマイクロの資料を基に作成した。左が購入者が希望するエクスプロイトが突く脆弱性、右が販売者の宣伝するエクスプロイトが突く脆弱性の発表年の割合。なお四捨五入の関係で割合の合計が100%にならない場合がある。
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