企業が自社専用の5G(第5世代移動通信システム)ネットワークを構築できる「ローカル5G」に注目が集まっている。様々な事業者が免許を申請するとともに、関連サービスの提供や実証実験を進めている。
その1つが、FTTH▼やケーブルテレビインターネットといった固定通信サービスを提供する事業者だ。ローカル5Gを用いたFWA▼(固定無線アクセス)の実証実験に取り組んでいる。
固定通信事業者の狙いは、集合住宅ユーザー向けインターネット接続サービスの強化。VDSL▼(超高速デジタル加入者線)などをローカル5GのFWAに置き換えることで、ラストワンマイルの高速化を狙っている。
光配線が困難な集合住宅も
FWAは、ユーザー宅近くのラストワンマイルだけ無線を用いるシステムである。ラストワンマイルよりバックボーン側は、光ファイバーなどでつなぐという構成を採る。一部の固定通信事業者は、そのラストワンマイルとしてローカル5Gを使いたいと考えている。
なぜ集合住宅のユーザーがターゲットなのか。そこには集合住宅ならではの問題がある。
例えば集合住宅向けFTTHサービスは、古くからあるサービス品目だと集合住宅内が電話線を使うVDSLになっており、これ以上の高速化が望めない場合がある。
これらを光配線にすれば高速化を図れるが、「配線工事には集合住宅の管理組合が合意しなくてはならないが、それが得られない」という理由で古い配線のまま使い続けているユーザーが少なくない。物理的に光配線にすることが難しいケースもあるようだ。
だがFWAならユーザーがCPE▼を置くだけで済む(図1)。ここでは2社の取り組みから、ローカル5Gを用いたFWAのメリットと、実現に向けての課題を見ていく。
4階建てのビルで実証実験
関西電力グループのオプテージは、大阪府内でFWAの実証実験を進めている。期間は2021年4月までを予定している。
実証実験の舞台は、集合住宅と同じ造りの4階建てビル(写真1)。その近くにある構内柱▼の高さ6mにローカル5G無線局を設置(図2)。約10m離れたビルの室内には電波を受信するCPEを置いた。
周波数は28GHz帯の100MHz幅を使用している。無線局の直近に端末があるなど条件が極めて良ければ、通信速度は下り700M~800Mビット/秒程度、上り150Mビット/秒程度になるという。CPEにはセイコーソリューションズの製品を使用している(写真2)。
2021年3月までに得られた実験結果によれば、CPEを窓の近くに置いた場合は問題なく電波を受信できているという。一方で窓から遠いところ、例えば廊下の近くにCPEを置くと電波が届かないケースがあるとしている。