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 PwCコンサルティングは2021年5月下旬、ゼロトラストネットワーク(ゼロトラスト)に取り組む国内企業を対象にしたアンケート調査の結果を公表した。調査結果から、ゼロトラストへの期待と成果には大きなギャップがあることが浮き彫りとなった。

8項目中7項目で下回る

 調査では、ゼロトラストを導入済みと回答した企業130社に対して、ゼロトラストに期待していた効果と、実際に得られた効果を尋ねた。その結果8項目中7項目において、得られた効果が期待していた効果を下回った(図1)。そのうち4項目については、得られた効果が10ポイント以上下回った。

図1●ゼロトラスト導入企業を対象にアンケート
図1●ゼロトラスト導入企業を対象にアンケート
PwCコンサルティングが公開する調査結果を基に作成。対象はゼロトラストを導入済みと答えた企業130社。数字は、項目の効果を「期待していた」あるいは「得られた」と回答した企業の割合。複数回答。
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 例えば「データ流出リスク軽減といったセキュリティーの向上」については、40.8%の企業が効果を期待したが、実際に得られたと回答したのは28.0%だった。

 ギャップがあった理由としてPwCコンサルティング シニアマネージャーの上杉 謙二氏は、「(ゼロトラストを実現するための)サービスなどの導入を短期間で進めるのは難しいので、しばらくは境界型モデルと併用する必要がある。そのためコスト面でのメリットを感じづらいのだろう」と推察する。

 期待と成果のギャップは、セキュリティーに関する項目で顕著だった。これについては、「セキュリティーのレベルが向上しても、その成果を判定するのが難しい」(上杉氏)ことが要因だとする。

 一方で生産性向上や働き方の変化に関してはギャップが小さかったり、成果が期待を上回ったりした。ゼロトラストを取り入れることで、安全なテレワークやコラボレーションツールの導入を実現しやすくなる。働き方を変えるという点に期待をかける場合、ゼロトラストの導入効果は早期に実感しやすいということだ。

失敗に終わらせないために

 PwCは報告書で実装にあたっての最も大きな障壁はコスト(時間・人・予算)だとしている。実際導入の際には、最新のセキュリティーに関する知見を持つ人材が時間をかけて検討しなければならない。ゼロトラストの実現に必要とされるサービスの利用料も決して安くはない。

 障壁を乗り越えるにはどうすべきか。上杉氏は経営層を巻き込むことが重要だと話す。やはりシステム開発・導入の「定石」にのっとることが肝要となるようだ。「ゼロトラストによって実現する生産性の向上は、経営課題そのもの。推進部門は意義を説明し、経営層の『お墨付き』が得られるよう動くべきだろう」(上杉氏)。