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 新型コロナウイルスの影響でテレワークが急速に広がっている。そうした中で、セキュリティー事故に対処するCSIRTの活動はテレワークで対応できているのか──。これを調査するため、日本コンピュータセキュリティインシデント対応チーム協議会(日本シーサート協議会、NCA)は加盟企業394社にアンケートを実施し、189社から回答を得た。調査期間は2020年5月11~15日。その結果から、企業のセキュリティー体制の実態が分かった。

9割はテレワーク環境を用意

 アンケートでは、まず「新型コロナウイルス感染拡大対策に関係なく、テレワーク対応を組織として準備していたか」を聞いた。その結果、「準備していた」と回答したのは189社中29社(15%)だった(図1)。「一部準備をしていた」(77%)と回答した企業と合わせると、9割以上の企業がテレワーク環境を用意していたことになる。

図1●「テレワーク対応を準備していたか」に対する回答
図1●「テレワーク対応を準備していたか」に対する回答
「新型コロナウイルス感染拡大対策に関係なく、テレワーク対応を組織として準備していたか」の設問には、15%が「準備していた」、77%が「一部準備していた」と答えた。日本コンピュータセキュリティインシデント対応チーム協議会(NCA)の情報を基に作成した。
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 NCAの副運営委員長を務めるグローバルセキュリティエキスパートCSOの萩原健太氏は、「NCAに加盟する企業の約7割は従業員1000人以上。東京五輪や働き方改革、BCP(事業継続計画)などの対策の一環としてテレワークの準備を進めていたのではないか」と推測する。

 また「一部準備していた」と回答した企業は、追加の対策として「サーバーやVPN装置、ネットワーク帯域の増強、オンライン会議ツールの導入といった対策を施した」(萩原氏)という。

 テレワーク対応として準備していた内容を複数回答で聞くと「テレワークのためのシステムなどの環境整備」(168社)という回答が最も多く、「テレワーク対応のための規定類の整備」(117社)、「テレワーク対応の際の利用者向けガイド」(116社)、「テレワーク対応の組織としての方針整備」(114社)と続いた(図2)。

図2●「テレワーク対応として何を準備していたか」に対する回答
図2●「テレワーク対応として何を準備していたか」に対する回答
テレワーク対応として準備していた内容を聞いた(複数回答)。最も多かったのは「システムなどの環境整備」で168社だった。NCAの情報を基に作成した。
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 一方、テレワークを想定したCSIRT活動については、これからという企業が多かった。「テレワークを想定したインシデント対応手順(CSIRT活動)」(19社)、「テレワークを想定した演習や訓練(CSIRT活動)」(10社)と少数にとどまっている。テレワークでの対応手順の整備や演習・訓練は今後の課題になりそうだ。