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 光ファイバーの上を車両が走行するときに伝わる振動を基に、交通状況を把握する──。NECは2022年5月、高速道路に埋設された通信用光ファイバーを利用して交通状況を可視化するシステムを中日本高速道路(NEXCO 中日本)に2022年3月に納入したと発表した。

 高速道路で発生する渋滞を予測するには、交通状況を正確に把握しなければならない。そのため、高速道路事業者各社は様々なセンサーを用いて道路を通過する車両数や車両速度を取得している。例えば、道路上に設置したカメラや道路下に埋め込んだループコイルで車両数や速度を計測するといった方法が挙げられる。また、ナンバープレートや車載ETCの情報を取得して、高速道路の入り口から出口までに要した時間を測定する方法もある。

 しかし、従来の方法には課題もある。交通状況をより正確に把握するためにはカメラやループコイルを高密度に設置する必要があるが、多額の費用がかかる。ナンバープレートやETCを活用する方法は、車両がパーキングエリア(PA)に立ち寄ると正確に計測しにくい。情報をリアルタイムに取得することも難しい。

車両通過時の振動で信号が変化

 こうした課題を解決すべく、NECは高速道路に埋設された既存の通信用光ファイバーをセンサーとして活用する(図1)。車両が通過すると、振動で光ファイバーに外部から圧力が加わる。その結果、「光ファイバーがわずかに伸びて流れる信号の位相が変化する」(NECデジタルテクノロジー開発研究所光センシング研究プロジェクトグループディレクターの樋野 智之氏)。

図1●車両通過時の位相の変化を捉える
図1●車両通過時の位相の変化を捉える
通信用光ファイバーで交通状況を可視化するシステムの概要。車両通過時の振動で光ファイバーに外部から圧力が加わると、信号の位相が変化する。この「信号のゆがみ」を連続して取得し、車両の数や速度をリアルタイムに把握する。(出所:NEC)
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 変化した信号は光の速さでセンシング装置に届く。位相の変化が発生した時間と光ファイバーの終端に設置したセンシング装置に届いた時間を計測すると、センシング装置から位相が変化した地点までの距離が分かる。こうした「信号のゆがみ」を連続して取得し、光ファイバーが埋設されている区間の車両数や速度をリアルタイムに把握するのだ。

 取得したデータを縦軸に時間、横軸に距離を指定したグラフにプロットすると、車両1台ごとの情報を軌跡として表せる。直線に近い軌跡なら、車両はどの区間も同じ速度で通過していることになる(図2左)。一方、渋滞が発生すると車両の速度は頻繁に変化するため、直線にはならない(同右)。

図2●車両の軌跡を抽出した様子
図2●車両の軌跡を抽出した様子
センシング装置で取得したデータをプロットすると、車両1台ごとの軌跡を抽出できる。直線に近い軌跡の場合、車両は同一の速度で通過していることになる(左)。一方、渋滞が発生すると車両のスピードは頻繁に変化するため直線にならない(右)。(出所:NEC)
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