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 2020年は国内で5G(第5世代移動通信システム)の商用サービスが始まった5G元年である。10年後の2030年を見据え「6G(第6世代移動通信システム)」に向けた動きが早くも活発になっている。

 NTTドコモは2020年7月17日、ホワイトペーパー「5Gの高度化と6G」の2.0版を公開した。これは同年1月に発表した初版を更新したものだ。7月29~30日にはイベント「5G evolution & 6G Summit」の第1弾を開催。これらの内容から、6Gの要求仕様や要素技術の方向性などを紹介する。

6G商用サービスは28年開始か

 6Gの商用サービスが始まる時期について、NTTドコモ執行役員の中村 武宏氏は「思ったよりも早めに始まる可能性がある」とみる。講演で同氏は、5Gの開発経緯から6Gのスケジュールを予想した。

 5GについてNTTドコモは2010年に初期コンセプト「FRA」を学会発表。2013~2014年には国内外で様々な検討プロジェクトが始まった。2014年から実証実験がスタート。2015年には3GPPで標準化活動が始まり、2018年に完了した。並行して携帯電話事業者や通信機器メーカーなどでシステム開発が進み、2019年に米国と韓国で商用サービスが始まった。初期コンセプトの発表から商用サービスの開始まで9~10年、実証実験からは6年ほどかかっているという。

 6Gについては、NTTドコモが2017年に初期コンセプトを発表。2020~2021年に検討のための様々なコンソーシアムが立ち上がる見通しだという。その後5G相当の作業が実施されるとすると、2028年には商用サービスが開始される可能性があるとした。

6Gの要求条件は6つ

 初期の5Gの要求条件は、「超高速・大容量(eMBB)」「超高信頼・低遅延(URLLC)」「超多接続(mMTC)」の3項目だった。6GについてNTTドコモは、「超高速・大容量」「超カバレッジ拡張」「超低消費電力・低コスト化」「超低遅延」「超高信頼」「超多接続・センシング」という6項目を要求条件として掲げている(図1)。5Gの要求条件をさらに高めた項目に加え、5Gでは考慮していなかった新しい項目もある。

図1●6Gの無線技術の要求条件
図1●6Gの無線技術の要求条件
NTTドコモの資料に基づき本誌作成。5Gの要求条件の向上に加え、5Gでは考慮されなかった新たな要求条件が追加されている。
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 ちなみに、6項目としたのは6Gの「6」という数字に合わせたからだという。6Gの要求条件を6項目とするのはNTTドコモに限ったことではなく、通信業界の世界的なトレンドだそうだ。

 6Gの要求条件のいくつかを簡単に見ていこう。超高速・大容量は5GのeMBBを発展させたものだ。eMBBの通信速度は最大20Gビット/秒だが、6Gでは100Gビット/秒以上と大幅に高める。

 超カバレッジ拡張では、あらゆる場所でギガビットクラスの通信速度が利用できるようにエリアを広げるとともに、人のいない空や海、宇宙などもカバーする。

 超低消費電力・低コスト化については、例えば無線を使ったワイヤレス給電技術を発展させ、電池切れの心配をしなくてよい端末の実現などを想定している。

 超高信頼に関しては、遠隔制御や工場自動化などの用途を考慮し、信頼度を5Gの99.999%(ファイブナイン)から6Gでは99.99999%(セブンナイン)に引き上げることを目指す。