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 新型コロナウイルスによって混乱している世界中の教育現場。学校は授業の立て直しに必死だ。感染防止策やリモート授業の導入といった工夫で授業を再開する国や地域が増えている。

 だが、ランサムウエアを使うサイバー攻撃者がそのような努力を踏みにじろうとしている。ランサムウエアとは、パソコンやサーバーに保存されたデータを暗号化して利用不能にし、元に戻したければ金銭(身代金)を支払うよう求めるマルウエア(コンピューターウイルス)のこと(図1)。

図1●データを利用不能にして「身代金」を要求
図1●データを利用不能にして「身代金」を要求
ランサムウエアを使ったサイバー攻撃の流れ。ランサムウエアとは、パソコンやサーバーに保存されたデータを暗号化して利用不能にし、復号したければ金銭を支払うよう要求するウイルス。身代金はビットコインで要求することが多い。
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 米国では8月から9月にかけて始まる新年度を狙ったランサムウエア攻撃が頻発。新年度の初日を延期しなくてはならなくなった学校もあった。

学校は格好のターゲット

 企業などに比べて学校は守りが手薄といわれている。予算や人員の確保が難しいためだ。このため以前からサイバー攻撃の標的になっている。

 例えばコンサルティング会社の米エドテックストラテジーズが運営するWebサイト「The K-12 Cybersecurity Resource Center」によると、2016年1月以降、K-12(幼稚園から高等学校)で発生したセキュリティーインシデントは2020年10月2日時点で1029件に上るという(図2)。

図2●学校がサイバー攻撃の標的に
図2●学校がサイバー攻撃の標的に
米国の学校(幼稚園から高等学校)で発生したセキュリティーインシデントの場所と件数を表す地図。黄色のピンがランサムウエア攻撃、赤色のピンが個人情報漏洩、青色のピンがフィッシング攻撃を指す。2016年1月から2020年10月までに1000件を超える被害が確認されている。
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 2020年に入ると、世間一般と同じようにランサムウエア攻撃が増えているようだ。セキュリティー企業の米アーマーによると、2020年1月1日~4月8日までに17の学区および大学がランサムウエア攻撃を受けたという。一方、2019年の同時期にランサムウエアに感染した学区および大学は8つだけだった。2倍以上になっている。

 そして8月から9月にかけて、新年度を狙ったランサムウエア攻撃が相次いだ。なぜこのタイミングを狙ったのか。コロナ禍で休校を余儀なくされていた学校としてはできるだけ早く授業を再開したいはずだ。そのため身代金の支払いに応じやすいと考えた攻撃者の卑しい魂胆が透けて見える。