ZoomやTeamsなどでビデオ会議をしている最中、参加者の眼鏡の反射光が気になったことはないだろうか。パソコンの画面などが、眼鏡のレンズに反射して映り込むことがある。
この反射光をうまく捉えれば、相手のパソコンに表示されている情報を盗み見できるのではないだろうか──。米ミシガン大学と中国の浙江大学の研究者グループはこの可能性を調べるために実験を繰り返した▼。
眼鏡をかけている人にとっては気になるところだ。さて、実際どうなのだろか。
映り込んだ1文字を読み取る
まずは理想的な実験環境を構築して、眼鏡に映り込んだ小さい文字をビデオ会議経由で識別できるかどうかを調べた。ビデオ会議ツールにはZoomを使用した。
眼鏡をかけた被験者をノートパソコンの前に座らせて、大きさの異なるアルファベット大文字(文字の縦の長さが7~20mm)を1文字表示させる(図1)。
被験者とビデオ会議をしている研究者は、被験者の映像を3秒間録画。映像から8フレームを抜き出して、眼鏡に映り込んだ画像を再構成した。
画像の文字の識別には、クラウドソーシングサービスのAmazon Mechanical Turk(MTurk)を使用した。同サービスで25人に依頼し、目視により画像がどの文字に見えるかを判定してもらった。そしてその正解率を識別率とした。
評価の結果、720p(1280×720画素)のWebカメラで、縦12mmなら90%以上、縦10mmの文字を75%以上の精度で識別できたという(図2)。
ただ、8mmや7mmでは識別率は大きく低下し、それぞれおよそ40%および10%だった。
次に実際のビデオ会議で盗み見が可能かどうかを調べた。具体的には20人の被験者に、自分の部屋から自分のパソコンでビデオ会議に参加してもらった。
そしてそれぞれのパソコンで、研究者が配布したHTMLファイルを表示させた。HTMLファイルには、7個から9個の英単語で構成されたニュース記事の見出しが含まれている。1つのHTMLファイルにつき30秒間映像を記録し、その映像から眼鏡に反射した見出しを識別する。なおビデオ会議経由だけではなく、それぞれの被験者の部屋に設置したビデオカメラでも録画した。
実環境では20人中6人が0%
さて結果だが、20人中6人については文字の大きさにかかわらず識別できなかった。縦35mmの文字で構成された見出しについては、ビデオカメラによる録画では4人、ビデオ会議経由による録画では3人が識別率100%だった。
だが10mmの文字では識別率は大きく下がる。ビデオ会議経由による録画ではたった1人だけが識別できたものの、識別率は12.5%だった。実環境では、前述の実験室環境のようにはいかないようだ。
研究者グループは、パソコンに表示されているWebサイトを識別する実験も実施した。Webサイトにはテキストだけではなくグラフィカルな情報が多数含まれる。このため、テキストだけを識別する場合とは状況が異なる。