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 NTTは10月23日、ビルの谷間や山あいのような見通しが悪い場所でも、GPS衛星による時刻同期の誤差を従来の約5分の1に改善するアルゴリズムを開発したと発表した。肝となったのは「質の悪い信号は捨てる」というものだ。

ビルなどでの反射が誤差の原因

 携帯電話の基地局で管理する時刻は、正確に同期されていることが重要だ。ずれていると、基地局同士の信号が干渉して通信効率に影響を与える。特に第5世代移動通信システム(5G)で使われる多重化技術のTDD(時分割多重)方式では影響が大きい。

 GPSでは、複数のGPS衛星から時刻情報を受け取り、それらから現在地と現在の時刻を計算する。現在地の特定や時刻の同期には、最低4基のGPS衛星からの情報が必要になる。日本では通常は10基以上のGPS衛星からの信号が届いている。そのため、空間に遮るものがない環境なら、誤差100ナノ秒(0.1マイクロ秒)以下の高い精度で時刻を計算できる。

 だが、見通しが悪い場所では時刻同期の精度が低くなる。その最大の原因は、GPSアンテナの見える範囲にあるGPS衛星(可視衛星)から直接届く信号のほかに、直接は見えないGPS衛星(不可視衛星)からの信号がビルなどの障害物に反射したり回り込んだりして届くためだ(図1)。

図1●GPSアンテナには複数のGPS衛星から信号が届く
図1●GPSアンテナには複数のGPS衛星から信号が届く
NTTの開発したアルゴリズムでは、直接見えるGPS衛星(可視衛星)から届く信号を優先し、そのほかの隠れたところから届くGPS衛星(不可視衛星)の信号は遅延の小さいものから順番に使うことで精度を向上させる。
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 特に最近はアンテナの感度が向上し「計算に悪影響を与えるGPS衛星の信号もよく拾うようになってしまい、結果的に精度が悪くなっていた」(NTTネットワーク基盤技術研究所 ネットワークアーキテクチャプロジェクト ネットワーク革新技術共創グループ主幹研究員の吉田 誠史氏)。

質の良い信号に絞る

 NTTの開発したアルゴリズムでは、衛星から受け取った信号のうち、質の悪い信号を排除し、なるべく質の良い信号だけを利用する。

 もし信号を直接受けられる可視衛星が4基以上あれば、その情報だけを利用する。反射や回り込みによって届いた信号は強度が弱まるため、可視衛星からか不可視衛星からかは容易に判別できる。可視衛星が4基に達しなければ、不可視衛星の信号の中で伝搬遅延の小さい信号から順番に必要最小限だけ選択して利用する(図1の1~3の順)。

 NTTでは試作品を開発し、ビルに囲まれた環境で性能を評価してみたところ、従来の計算方法では100ナノ~200ナノ秒の誤差が生じていた場所で、40ナノ秒以下と5分の1に抑えられた。位置情報についても、従来方式では10m以上だったが、新アルゴリズムでは1m以内とほぼ正確に測位できた。