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 人工知能(AI)が生成した「実在しない人物の顔写真」を見たことがある人は多いだろう。不自然さを感じさせず、本物にしか見えない。このため一時期話題になり、「複数の顔写真から、実在しない人物を当てる」といったキャンペーンやWebサイトも作られた。実在しない人物の顔写真を生成するWebサイトもある。

 顔写真の生成には、敵対的生成ネットワーク(GAN)と呼ばれる技術が使われている。GANは2種類のAIを競わせて画像などを生成する技術である。この場合、架空の画像を生成するAIとその精度(人間らしさ)を判定するAIを競わせることで、より自然に見える画像を生成するという。

 様々な可能性を感じさせる技術であるが、悪用も確認されている。その1つがSNSアカウントのプロフィル画像への使用である。架空のアカウントを作成し、そのプロフィル画像に実在しない人物の顔写真を使用するのだ。そしてそのアカウントを使って詐欺を働く。

 実在する人物の画像を使うと詐欺がばれやすい。例えばGoogleの画像検索などを利用されると、画像の流用に気づかれる可能性が高い。だが、AIが生成した顔写真を使えばその心配はない。

 このため純粋な研究目的に加えて悪用対策としても、AIによる顔写真を見破る方法がいろいろ提案されている。米ニューヨーク州立大学オールバニ校などの研究者が2021年9月に発表した方法もその1つだ。

 ただ、この方法は他の方法とは大きく異なる特徴がある。それは、驚くほどに簡単なことだ。一体、どのような方法なのだろうか。

瞳孔は滑らかな円のはず

 この方法を研究する出発点になったのは、「AIが生成する顔の瞳孔は、滑らかな円や楕円ではない場合がある」という観察だったという。「私たちの方法は、人間の瞳孔はほぼ円形でなければならないという単純な生理学的仮定に基づいている」と研究者らは論文の中で述べている。

 論文での実験では、AIで生成した顔写真と実在する人物の顔写真をそれぞれ1600点用意し、画像処理によって瞳孔の「楕円度」を計算した。

 顔写真の生成には「StyleGAN2」と呼ばれる最新のモデルを使用。実在する人物の顔写真には、実験用に収集された「Flickr-Faces-HQ」と呼ばれるデータセットを使った。

 実験では、顔写真から目の場所を特定してトリミングし、目の画像から瞳孔の形状を予測する(図1)。そして、予測した瞳孔の形状と、それを補完した楕円形を求める。両者が近ければ楕円度が高いとする。

図1●顔写真から瞳孔の「楕円度」を求める
図1●顔写真から瞳孔の「楕円度」を求める
今回の研究で実施した画像処理の手順。入力された高解像度の顔写真(a)から、目の画像をトリミングする(b)。そして(b)から目の瞳孔の形状を予測する(c)。また、(c)を補完して楕円形を生成する(d)。(c)と(d)が近ければ、すなわち(c)が楕円形に近ければ実在する人物と判定する。この顔写真は架空の人物。(出所:Eyes Tell All: Irregular Pupil Shapes Reveal GAN-generated Faces)
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